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第4話
にぎやかな食事の後
お風呂に入り自室へ戻ってきた
ふぅ…ようやく1人になれた
スマホを取り出し画面を見ると通知が2件
一つは旭くんともう一つは蓮くん
画面の上にきていた旭くんの名前をタップする
"アホからの連絡は気にしなくていいからな!
なんなら返事もすんな"
「なんのことだろ」
アホ…
共通の友人だろうし蓮くんのことかな
確かにmineも来てるし
とりあえず、蓮くんの方も見てみよ
旭くんのトーク画面を閉じて蓮くんの名前をタップする
"お疲れ様!
まひろん!!あさひに会ったんだって?!?!
どうだった?!あいついいやつでしょ?
見た目あんなだけど、根は優しいやつだからさ!よかったらこれからも仲良くしてやってな!
あ、あと、家族想いで弟と妹の面倒よく見てるし!家の手伝いもしててさ。あ、あさひんち実家が小料理屋なんだけど、あいつも料理うまいんだぜ!……etc"
「お、おお…」
ものすごい長文が来ていた
蓮くんが興奮しながら話している光景が目に浮かんだ。
"蓮くんもお疲れ様。
旭くんすごく優しかったよ。
僕の方こそ、仲良くしてもらえると嬉しいな"
旭くんには返事するなと言われたけど
せっかくこんなに送ってくれたんだし返信しておいた
「ふふ、旭くんのこと大好きなんだなぁ」
送信されたのを確認して画面を旭くんに戻した
"蓮くんから連絡来てました。
2人は本当に仲がいいんですね。
旭くんのことが大好きなのが伝わってきました。"
微笑ましいななんて思いながら返事を打つと
すぐに既読がついた
"あいつが変なこと言ってても聞き流していいからな。無視しろ。無視
あと、仲良しじゃねぇ。
あのアホが俺のこと大好きとか寒気がする…"
何がなんでも仲良しなのは否定するんだもんなぁ
僕と会ったことを蓮くんに伝えてる時点で仲良しなんだと思うけど
それから何気ないやりとりが続いた
相変わらず旭くんは蓮くんに対して辛辣な態度だけれど、節々から仲の良さが伝わってきた
「いいなぁ」
きっと気心知れた仲というのはこう言うことなんだな。
僕も仲良くなれたら軽口を言い合ったり気兼ねなく駄弁ったりできるようになるのかな
なにかのお礼だとかそう言うの抜きにして一緒にいられたら、なんて
でも、たまたま保健室に居ただけだし、他の人が当番だったら、きっとこの状況はその人のものだったんだろう
偶然の産物であるこの状況で
これから仲良くしてください、なんて送っていいものなのだろうか。
蓮くんは仲良くしてやって、とは言ってくれているけど…旭くんはどう思ってるんだろう
うーん。と悩んでいると通話機能の呼び出し音がなった。
反射で通話ボタンを押してしまった
「も、もしもし。旭くん、ですか?」
「おう、悪い。急に返事来なくなったから、気になって」
大丈夫だったか?と少し申し訳なさそうにしているのが伝わってきた
「大丈夫ですよ。
僕の方こそごめんなさい。なんでもないことなんですけど、ちょっと考え事してました。」
「そうか、なんもないならいいんだけどよ。
なんかあったら言えよ。」
電話口から聞こえる優しい声が耳を振るわせる
お言葉に甘えて言ってしまっていいだろうか
「あの、旭く「あと!俺も真紘と仲良くしてぇって思ってるから。」…へ?」
いま、旭くんから仲良くしたいって
というか、名前、呼ばれた??
「いや、急にこんなこと言われても迷惑だよな。」
「そっそんなこと!!ないです。
嬉しい、です。こちらこそ、よろしくお願いします。あ、あと、真紘って」
だんだんと自分の声が小さくなっていく
顔が暑い
言ってくれたことも嬉しかったが、それ以上に名前を呼ばれたことにドキッとしてしまった
「あ゛っ、いや!わるい!急に名前呼びされても違和感あるよな…
けど、俺は名前呼びにしろって言ってるわけだし…いや、でも、佐倉が嫌なら、元の呼び方に、戻す…」
今度は旭くんの声が尻すぼみになっていく
「ううん。僕も名前で呼んでくれると嬉しいな。その方が仲良くなった気がするし!」
「っ?!お、おう!ってか、佐倉、じゃなくて真紘、話し方が」
「だめ、だったかな。敬語だと距離感があるかなって思って」
「だっだめじゃねぇ!むしろ、そっちのがいい。
それに、その方が楽だろ?なら、そのままがいい」
焦ったような返事が帰ってきた
僕のことを気にかけてくれてるし、やっぱり優しいなぁ
「なら、よかった。
じゃあ、改めて、よろしくお願いします!」
「お、おう。よろしく頼む。」
「あ、今の敬語になってた」
「ふはっ んと可愛い」
「??」
笑い声の後にぼそっと何か言ったような気がしたが電話口のせいもあってうまく聞き取れなかった
でも、なんだか、機嫌がよさそうだから、よしとしよう
「そういや、真紘はいつも何時ごろの電車で学校行ってるんだ?」
「えっと、朝は電車混む前にと思って少し早めの7時ごろに学校の最寄駅に着くようにしてる、かな」
早めに教室に着くとゆっくり趣味の時間が作れる、と言う理由もある。
「そうか、わかった」
「????」
なんでそんなこと聞いてきたんだろう。
聞き返そうとしたが
「じゃ、朝早いだろうし、そろそろ終わらないとな。
今日は急に悪かった。けど、声、聞けてよかった」
「うっうん!僕の方こそ」
「んじゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」
通話が切れた
しばらく耳に残った声に意識を向けていると
大事なことを忘れていたことに気がついた
「今日のお礼、どうしよう」
――
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