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第5話
…ピピ ピピピー
「んぅ…」
朝 いつも通りの時間に目覚ましが鳴り
まだ少し眠い目をこすりながら体を起こす
カーテンから差し込む光が眩しい
ベッドから出て体をぐっと伸ばす
パジャマのまま部屋から出て階段を降りていくと階下からパンの焼ける香りが漂ってきた
今日の朝はパンかぁ
定番なのはフルーツジャムかな
あ、でも、シンプルにバタートーストも捨てがたい。昨日食べたシュガーバタークレープみたいにグラニュー糖かけても美味しいかも
ぐぅとお腹がなる
少し早足になってリビングに入ると片手にコーヒーを持って新聞を読んでいる父さんとキッチンでトーストを焼いている母さん
「おはよう。」
「お、おはよう。真紘はいつも早起きだなぁ」
「おはよう、まひろ。ゆっくり眠れた?昨日は遅くまで誰かと電話してたみたいだけど。ふふ」
新聞の向こう側から顔を出した父さんと昨日の夜と同じように少しにやにやしている母さん
「母さん、盗み聞き?そういうのやめてよ…」
「そうだぞ、真紘も年頃なんだから聞かれたくないこともあるだろうし」
父さんのその言い方も誤解を生みそうです嫌なんだけど
「違います〜。部屋の前を通ったら声がたまたま聞こえたのよ」
ぷくーっと頬を膨らませて反論してきた
「それよりちょうどパン焼けるわよ。2人ともバターにする?ジャムにする?」
「そうだな、じゃあ、バターにしようかな」
「パパはバターね。まひろは?」
「僕もバターたっぷりがいい!」
はいはーいと言って、こんがり焼けたトーストの上にバターを塗ってくれる
冷蔵庫にサラダがあるから持ってきて食べなさいね。
と言われたので小鉢に入ったサラダを出す
ついでにコーヒーと牛乳をとってきてカフェオレを準備した
「はい、どうぞ」
椅子に座ったタイミングで母さんがバタートーストを持ってきてくれた
「ありがとう、ママ。
うん、いい匂いだ。いただきます」
父さんは新聞をテーブルにおき、トーストにかじりついた
サクッと言う小気味いい音をたてる
僕も早く食べたい!
でも、ここで一手間
「ありがと母さん。
ねぇ、このグラニュー糖もらってもいい?」
父さんのコーヒーの近くに置いてあるグラニュー糖が入ったスティック状の包み紙を指差す
「おう、いいぞ。
それをどうするんだ?
真紘はカフェオレに砂糖入れないよな」
「うん。飲み物じゃなくて、トーストの上にこうする!」
包み紙を破いてバターがたっぷり塗られたトーストの上に砂糖をまぶす
結構たくさんかかっちゃったけどこれはこれで美味しそう
「できた!シュガーバタートースト!」
「ほう」
「あら、おしゃれなことしてるわね。」
「昨日食べたシュガーバタークレープが美味しくてさ。トーストでもやってみようと思って!
それじゃ。いただきまーす!!」
サクッ シャリッ
「んんー!おいひい!!」
でも、ちょっと食べにくいかも。かじった拍子に砂糖がボロボロ落ちてしまった。
少し焼いて砂糖焦がした方が良かったりするのだろうか。
なんて考えながら一旦トーストをお皿に置いて指についた砂糖を舐めとりカフェオレを一口
うん、ほろ苦いカフェオレとよく合う。
しばらく、朝の定番になりそうな予感。
「ごちそうさまでした!」
トーストとサラダ、カフェオレを平らげて手を合わせる
「お粗末でした。今日も早めにでるの?」
「うん。そのつもり。」
「そう。気をつけて行ってくるのよ」
「はーい。」
食器を片付け、家を出る準備を始める
歯磨き、洗顔、着替え、荷物の準備、いろいろ終わらせて、再度リビングに行くと机の上にお弁当が3つならんでいた
いつもの風呂敷に包んである自分の分をカバンに入れる
「お弁当いつもありがと。
じぁあ行ってきます!」
「どういたしましてー。いってらっしゃい」
「いってらっしゃい。気をつけてなー」
「はーい。」
父さんと母さんに見送られて家を出た
駅まで歩き、いつもの時間の電車に乗る
揺られること十数分で学校の最寄駅
まだ混んでないのでゆったりと電車でも座れた
改札を出ると見知った顔が二つ
旭くんと蓮くんだった
なぜか改札の方を向いて立っていて
目が合ったと思ったら蓮くんが飛んできた
「まっひろーん!おーはーよー!」
旭くんもその後に続いて飛びつこうとしていた蓮くんの首根っこを掴んだ
「こら、飛びつくな。
はよ 、、真紘」
「蓮くん?!それに旭くんも?!
おはよう!
いつもこの時間には見かけないのに
何かあったの?」
そう聞くと蓮くんを掴んでいた手を離しそっぽを向く旭くん
蓮くんはというとそんな旭くんを見てニヤついている
「いやー旭が『明日早めに起こせ』なんていうからさ。オレも何事かと思ってたんだけど。まひろ、ねぇ。ほー、なるほどねぇ。」
「るせ。その顔でこっちみんな。」
「きゃー!旭が怒ったー!まひろん助けて〜」
そう言って蓮くんが僕の背中に隠れようとする
身長的に隠れられてはいないんだけど
旭くん 僕 蓮くんというサンドイッチ状態
「えっと?????」
よくわからないが、2人が仲良しなことはわかる
声真似もすごく似てたしそれだけ一緒にいた時間も長いんだろう
そんな2人の間になぜ自分が挟まれているのか
状況が掴めず困惑していると耳元で蓮くんの声がした
「旭のやつ、きっとまひろんと一緒に登校したくてオレに起こすよう言ってきたんだぜ」
いつもは始業ギリギリの遅刻寸前のくせに
とくすくす笑いながら教えてくれた
「っ?! てめぇ…余計なこと言ってんじゃねぇ!」
あはーまた怒ったーなんて言いつつきゃっきゃっしている
「旭くんが?一緒に?」
「…ああ、そうだ。俺が勝手にそうしたいって思っただけで、真紘が嫌なら別に…」
一緒に登校したくてわざわざ早めの時間に起きて待っててくれていたんだ
あ、だから昨日電車の時間聞かれたのかな
嬉しい
昨日の電話はお世辞とかでなく
本当に仲良くしたいと思ってくれていたんだとわかり、嬉しくて胸が締め付けられるような息が詰まるようなそんな感覚がした
「ううん!全然いやじゃないし。すごく嬉しいよ!いつもは1人だから、朝から賑やかなのは楽しいし」
「そうか。なら、よかった。」
ほっと一息ついて笑う旭くん
「いやぁ、振られなくてよかったねー。さっきまで『迷惑じゃねぇかな。やっぱ急に待ち伏せされても困るんじゃ…』とか、心配してたもんねー!」
いつの間にか僕の背中に隠れるのをやめた蓮くんが旭くんの肩をポンポンと叩きながら揶揄うように言った
「あ゛ぁ?!さっきから余計なことばっかり言ってんじゃねぇ!!」
「あはー。言っちゃダメだった?でも、
事実だしなー」
顔を真っ赤にした旭くんが殴ろうとするが
蓮くんはヒョイっとそれを避けながら笑っている
「ふふっ本当に仲良しなんだね。」
「っ!ちげぇ!たまたま家が近いから目覚まし代わりにしただけで!」
「えー、ひどい。都合のいいオンナみたいな言い方されたー。まひろん慰めて〜」
ぴえーんと言いながらこっちに戻ってきた
苦笑いしつつ後ろから肩に乗せられた頭を撫でる
「よし、よし??
えっとこれでいいのかな」
「んー、まひろんやさしー!好きー!」
「うわっ」
「!!!」
後ろから蓮くんに抱きしめられた
一瞬こっちを見る旭くんの目つきが睨みつけるようなものになったような気がした
「へっへーん。羨ましいだろー!」
まひろんはちょうどいいサイズだからハグすると癒されるんだよなぁ
ぎゅうぎゅうと抱きつく力を強くする蓮くん
蓮くん学校でもたまにハグしてくるのはそういうことだったのか…というか
「ちょうどいいサイズってチビってこと?
褒められてる気がしないんだけど…」
「褒めてる褒めてるー」
「どうなんだか」
「ほんとだってーっうわ?!」
急に背中の重さがなくなった
旭くんが蓮くんの襟元を掴んで僕から引き剥がしてくれたみたいだ
「いい加減、離れろ!」
「ちょっ、いてて、そんな力いっぱい引っ張らなくても」
結構勢いがよかったのか首元をさすりながら抗議をしている蓮くん
せっかくまひろん補給タイムだったのにーとまるで反省はしていない様子
「うるっせ!お前はひっつきすぎなんだよ!!」
「あれあれー?旭くんもしかしなくても嫉妬ですかー??」
「ちっげぇぇ!!!
はぁ、このアホはもういい…
早く学校行くぞ!」
くるっと反対側を向いて学校の方へ歩き出す旭くん
少し崩れた制服を整え その後を急いで追いかける
「あっ!旭くん待って!
ほら、蓮くんも行くよ」
「はいよー!」
前を行く旭くんはすこし耳が赤いようにみえた
それを見てまた蓮くんがケラケラ笑っている
「ふふっ、楽しいなぁ」
誰かと談笑しながらの登校
これが日常になったらな
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