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第6話※
「はぁ、……槇、槇っ……」
「ちょっ……ん、っ、こら、樹基っ……」
槇からの許しが出たことが嬉しすぎて、これ以上触れることを我慢しなくてもいいのだと思うと幸せで、僕はそのまま槇をベッドに押し倒してしまった。
槇が普段眠っているベッドの上に、頬を薔薇色に染めたセクシーな槇が横たわっているという絵面はとてつもなく色っぽく、僕はむしゃぶりつくように槇のうなじの匂いを嗅ぎまくった。
槇をきつく抱きしめて、すーーーはーーーすーーーはーーーと深呼吸を繰り返す僕は、はたから見なくても相当気持ちの悪いヤバいやつだとわかる。
だけど、この部屋に入った瞬間からほわほわと漂っていた愛しい槇の香りをもっともっと確かめたくて、僕は槇のうなじに鼻先を擦り寄せて、「槇、好きだよ。槇……」とうわごとのように繰り返した。
「たつき! く、くすぐったいってば……!!」
そんな僕の肩をぐいぐい押し返すものの、槇の手にはあまり力が込められていない。僕はようやくくんくん匂いを嗅ぐのをやめ、肘をついて槇から少し顔を離した。
あいかわらず困ったような顔をしているけれど、うるうるに潤んだ瞳には甘さがある。こんなにもじっくりと槇の瞳を見つめていられる日がくるなんて感動だ。
すると、スッと槇の手が持ち上がり、僕の伊達眼鏡を外した。薄いレンズとはいえ隔てるものがなくなると、よりいっそう槇の瞳の美しさが視界に迫ってくる。長い前髪を槇の手でかきあげられ、触れてもらえる歓びに、ぞくぞくと興奮した。
「こっちのほうがいい。前髪も切れよ」
「……そ、そうか?」
「なんで隠しちゃうんだろって、いつも思ってたよ。樹基の顔、かっこいいのに」
「か、かっこいい……? 僕が?」
「そうだよ。自覚ないのか?」
「ないよ……。自分でも、僕はアルファのくせに気持ち悪い男だなと思ってたから」
さらりと流れ落ちてくる僕の黒髪に指を絡めながら、槇はうっとりするほどに優しい微笑みを浮かべた。そして、「気持ち悪くないよ?」と首を傾げる。
「中学の頃、槇のそばでボディガードをしようとしたら、キモいと言われたが?」
「ああ……ごめん。俺、あの頃からお前のことだいぶ意識してて」
「は!? なんで!?」
「お前のこと、弟っぽい幼馴染みくらいにしか思ってなかったんだ。だけど、どんどん背が伸びて、逞しくなって、しかも俺のこと守りたいとかなんとか言いだすし」
「ああ……うん、言った」
「お前がそんなこと言うなんて思わなかったから、びっくりした。……嬉しかったけど、照れくさくて」
はにかむように目を伏せながらそんなことを言う槇はあまりにも可憐だ。愛おしくて、可愛くて、僕は「ううう……」と獣のようなうめき声を漏らしてしまう。胸がいっぱいすぎて、呼吸さえままならない。
「槇……。そろそろ、キスがしたいんだが」
「えぇ? それ、いちいち確認取る?」
「だ、だって。よく、わからないんだ。こういうの、初めてだから」
「ふふ……俺も」
しっとりした笑みを浮かべた槇の腕が、四つ這いになった僕の首にするりと絡まる。その腕に力がこもり、ぐっと下方向に引き寄せられた。
固く固く目を閉じた僕の唇に、ふに……と柔らかな何かが触れた。僕の勘違いでなければ、それは紛れもなく槇の唇ということになる。
——ということはつまり……僕は、槇と今キスをしている……!?
ぶわっと全身の体温が一気に上昇し、血が沸騰しそうなほどに興奮した。下からふに、ふにと僕の唇を甘やかすように啄む槇の動きはあまりの心地良さで、いい匂いがして、可愛くて……。
「んっ……、んっ……」
僕は口を開き、吐息ごと飲み込むように槇の唇を貪った。互いの唾液で濡れた唇が重なり合う感覚は思いのほか淫らで、ただでさえ膨張していた股間にさらなる血流が集まってゆく。
物を食べることくらいしか用途のなかった唇という身体のパーツが、槇と触れ合うことでこんなにも快楽を感じるのかと驚いてしまう。それほどまでに、槇とのキスは気持ちが良かった。
「っ……ァ、ん……たつき、っ……」
「槇、槇……好きだ。ずっと好きだった、夢みたいだ」
キスをしながら、勝手に手が動いてしまう。許可も得ていないというのに、僕の手は槇のセーターの中に忍び込み、ほっそりとした腰から脇腹へと這い上がってゆく。
僕の手が触れるたびに、槇はびく、びくと肌を震わせ声を漏らすが、それは決して嫌そうなものではない。むしろすごく色っぽい吐息を漏らしながらさらに僕を引き寄せて、積極的に舌を絡めてくれるのだ。
「……槇……っ……はぁ、ん、ん……」
夢中になって舌を絡め合ううち、槇の唾液の甘さをより強く感じるようになってきた。触れた肌はますます熱く、しっとりと汗を含み始めている。
「あ、ァ……はぁっ……」
ちゅぅ……とリップ音を残して一旦唇を離してみると、槇はとろんとした目で僕を陶然と見上げていた。股間を鷲掴みにされるような淫らな可愛らしさに衝撃を受け、僕は思わずイキそうになった。
すると突然、ぶわ……と、より強く濃密に放たれる槇のフェロモンを感じた。
それを吸い込んだ瞬間、僕の体温までつられて上昇するような、すさまじく蠱惑的な香り。槇の瞳からは理性が薄れ、ひどく無防備な表情へと変化していて……。
——これが……ヒートか。
「はぁ、はぁ、……っ……ん、たつき……」
「大丈夫、僕がずっとそばについてる。大丈夫だ」
「ん……たつき……」
深く唇を重ねながら、槇の柔らかな髪をゆっくり撫でる。重たげに持ち上がった槇のまつ毛はしっとりと涙に濡れ、どこか心もとない眼差しで僕を見上げる。安心させるように微笑んで見せると、槇はゆっくりと表情を綻ばせた。
「樹基、ぬいで、服……もっとくっつきたい」
「う、うん……わかった」
上体を起こし、今日一日着たままだった白衣と制服のシャツを脱いでいると、槇も気だるげに身体を起こして、身をくねらせながら黒いセーターを脱いでゆく。
黒い服から徐々に露わになってゆく肌は、熱を持っているせいかほんのりと淡い桃色に見える。汗で艶めく肌を前にして、僕はごくりと大きく唾液を飲み下した。
「樹基……たつき」
僕の膝の上に乗ってきた槇が、自ら僕の唇を求めて抱きついてきた。裸になった上半身同士をぴったりと密着させながら、やわらかな舌をこすりあわせているだけで達してしまいそうだ。
胸にかすかに感じる小さな尖りは、槇の乳首ではないだろうか。それを自ら僕に擦り寄せて快感を得ているのか、キスの隙間に槇のちいさな喘ぎ声が耳をくすぐる。
槇の背に回していた片方の腕を緩め、そっと胸元へ向かわせる。そして、つんと尖った胸の尖りを指先でくにっと押しつぶし、くりくりと弄んでみた。
「ァっ……! ぁ、んっ……、ぁ」
「……気持ちがいいのか? ここ」
「んっ、ぁ……きもちいい……、じぶんでするより、きもちいい……」
「じぶんで……」
「たつきにさわられたらどんなだろって……想像して……っ、ぁ」
色香しかない掠れ声でそんなことを囁かれ、頭が爆発しそうになった。
ということはつまり、槇はひとりでヒートを乗り越えるとき、自らここをいじりながら自慰をしていたということだ。
僕に触られることを想像していたということは、僕の名前を呼びながら吐精することだってあったかもしれない。
——ぐっ……!! かわいそうだがエロい。エロいしかわいいしたまらなくエロい……!!
プツンと何かが切れてしまった僕は、ぐいと槇の腰を持ち上げて膝立ちにさせた。そして、目の前にあるピンク色の尖ったそれに唾液で濡れた唇と舌を押しつけ、思うさま舐めしゃぶる。
「ぁ! ァっ……! んんっ……たつきっ……! ァっ……!」
片方の手で乳首を摘んだり押しつぶしたりしつつ、唇で乳首を吸い、舌で乳輪を辿って舐めくすぐる。そのたびにじゅぷ、ちゅぷっ……といやらしい水音が響き、槇の喘ぎ声とともに僕の脳みそを溶かしてゆく。
「ん、んっ……! ぁ、……だめ、って……いっちゃう、からっ……!!」
ダメと言うわりに、槇は自ら僕の唇に乳首を押し付けては、艶かしく腰を揺らしている。
かり、と尖った先端を甘噛みしたとたん、ビクン!! と槇が全身を縮こませて僕にしがみついてきた。慌てて背中を支えている間も、びく、びくっ……と痙攣するように身体を震わせ、「はぁ、はぁっ……!」と呼吸を乱す。
「……い、イったのか? 僕に乳首を舐められただけで?」
「ん……う……。はずかしいこと……いうな……っ」
「恥ずかしくなんかない! ああ、槇……嬉しいよ。僕なんかの愛撫で、こんな……」
くったりと僕にしなだれかかる槇を強く強く抱きしめながら、僕は感極まっていた。
童貞で冴えない僕に触れられることを、こんなにも喜んでくれるなんて可愛すぎる。こんな幸せ、今までに一度も味わったことがない。
しかも、ふたたび身体を起こした槇が、膝立ちのまま僕の前でズボンを脱ぎ始めている。……僕は目玉をひん剥いて、初めて見るほっそりした生脚と、先ほどの絶頂でトロリと濡れそぼった槇のそれとを凝視した。
「……なぁ、もう挿れよ?」
「はっ!? で、でも……!!」
「ずっとほしかったんだ。……ねぇ、挿れてよ」
切なげな表情で僕にキスをしながら、槇はかちゃかちゃと僕のベルトを緩め始めた。促されるままに腰を浮かせると、ズボンと濡れた下着を一緒くたに降ろされ、バキバキに勃起した僕のペニスが露わにされてしまった。
「……で、っか。すご……」
「もう……ずっと、頭も身体も興奮しっぱなしだ。正直僕も、槇とこういうことができたらいいのにと……思っていたから」
羞恥心を押し殺しながらそう訴えると、槇はさらにとろけるような笑顔で僕を見つめて、チュッと可愛いキスをしてくれた。
「俺も。樹基とするのほんとにきもちいいし……幸せ」
「う、うん……」
「だから樹基にも、もっと気持ち良くなってほしいよ」
槇はゆっくりと腰を上げ、僕と唇を重ね合わせた。そして……。
「ぁ、んっ……ふぅっ……」
「う、あ……っ……ぁ……!」
トロトロにとろけた狭い後孔に、僕の怒張が飲み込まれてゆく。自慰とは比べ物にならないほどの快感だ。熱くて、たっぷりと濡れてとろけているのに、狭くて、きつくて……。
しかの目の前では、槇が細い腰をくねらせながら小刻みに尻を揺らして、僕のそれを自ら迎え入れようとしてくれているのだからたまらない。僕はガシッと槇の腰を掴み、仰いて嘆息を漏らした。
「ァっ……まきっ……!」
「ん、んっ……ふとくて……っ、なかなか入んないな……」
「うっ……待っ……そんなに締めつけられたら、イくっ……!」
「がまんしろ……全部挿れてよ。……ぜんぶ、おくまで……っ」
初めは少し反発するような抵抗を感じていたものの、先端を飲み込まれてしまえば、あとはむしろ引っ張り込まれるように締めつけられる。
きゅ、きゅっとうごめきながらひくつく内壁にペニスの全てを包み込まれるのは、信じられないほどの快感だった。
僕は思わず槇を抱き寄せ、噛み付くようなディープキスで唇を貪った。そうするうち、僕は無意識に腰を使うようになっていて……。
「ぁ、あっ……ァ! ぁん、っ……たつき……ぁっ」
「ごめん、いきなり動いて……っ」
「あんっ……! あ、あっ……、はぁっ……ァ!」
これが対面座位というやつか——頭の片隅でR18知識を振り返りながら槇を支えて、下から突き上げるように腰を遣った。
初めは僕の肩に手を添えて腰をしならせ、「ぁ、あ、あん」と快楽を味わっていた槇だが、だんだん表情には余裕がなくなってきた。
「たつきっ……、またイきそ……」
「僕のペニスで、イってくれるって……?」
「ペニス……って、ふはっ……そういうの、口で言うなって! あはっ……ぁんっ、ん」
笑いながら喘ぐという器用なことをしている槇もすこぶる可愛い。それに、この身体で槇を満足させられているらしいことが、とても誇らしかった。
身体を繋げたまま、僕は槇を真っ白なシーツの上に横たえる。そしてさらにグッと身を乗り出し、槇の最奥を狙うように深く穿った。
さっきよりも結合部が露わに見え、それがまた僕の興奮を煽った。小さな窄まりに飲み込まれている僕の怒張はあまりにも暴力的に見えるが、槇は健気に揺さぶられながらも「ぁ、あ! きもちいい、きもちいい……はぁっ……」と妖艶な眼差しを僕にくれながら喘いでいる。
いつしか行為は激しくなり、部屋の中には僕らの喘ぎと肌がぶつかる音だけが高らかに響いていた。
無我夢中で腰を振り、槇を穿ちながら、何度も愛の言葉を囁き合う。
差し伸べられた手を掴めば、槇から指を絡めて手を繋いでくれる。
嬉しくて、幸せで、涙が溢れそうだった。
「ぁ、っ……も、だめ、イク、イクっ……っ……————!!」
「っ……う、……ァっ……」
そうするうち、槇は全身で僕をきつく抱きしめながら、ふたたび達した。甘く、きつく締めつけられる快感に僕はとうとう負けてしまい、槇の中に思い切り吐精してしまう。
「……ん……はぁ……っ……は……はぁ……」
「ご……ごめん……! 中に……」
「いいよ。……そうしてほしかったから」
「ほんとにごめん。すぐ、きれいにしないと……」
「待てって」
慌てる僕の腕をぐっと腕を引き、槇が強く抱きついてくる。自然と唇が触れ、重ね合うだけのキスを何度も交わしながら、槇は微笑んだ。
「ヒート、はじまったばっかりなんだ」
「う、うん……」
「もっとしたい。……こんなんじゃ、ぜんぜん足りない」
幼馴染みのセクシーなおねだりはあまりにも可愛くて、僕は片手で額を抑えて天を仰いだ。
「ぐぅっ…………かわいい……可愛すぎる……」
「たつき……しようよ、はやく」
甘えるようにしがみついてくる槇の魅力に、この僕が逆らえるはずもなく——……。
せっかく作ったネックガードなどそっちのけで、僕は槇との濃厚セックスに没頭したのだった。
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