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第3話 笑顔の裏にあるもの(2)★

「……っ」  指先を舐め回され、ときに甘噛みされ、そのたびに隆之はゾクゾクとした感覚に襲われてしまう。  巧みなナツの言動はまるで小悪魔のようだ。人の心を惑わすようでいて、その実、空いた隙間を埋めてくれる。だからこそ、性別も関係なしに身を委ねたくなるのかもしれない。  他人に忠告されたからって、何を戸惑うことがあるのだろう。本人も受け入れてくれているし、このひと時だけはこうして自分のことを一番に考えてくれているというのに。  別に疑似恋愛だっていい。手に入らないものだとしても――そう考えて、軽く頭を振る。 (いや、今はそっちの方が楽だ)  一度手にしてしまえば、失ったときに辛い思いをするのだから。あんなのはもう御免だ。 「また俺を指名してくれたってことは、期待してもいいんだよね?」 「……ああ、他の子ではその気になれなかった。俺はやっぱり……君がいいと思ってしまった」 「へへっ、嬉しい。俺も隆之さんのこと大好きだよ」 「ナツ――」  誘われるがままに頬へ手を伸ばすと、ナツは嬉しそうに目を細めた。そのままゆっくりと顔を近づけ、優しく唇を奪ってやる。 「はっ……ん」  何度か角度を変えて重ね合わせるうち、次第に物足りなくなってきて、そっとシャツの中に手を差し入れた。ナツの体は火照っており、胸の先端はすでに固くなり始めている。 「あ、は……っ、隆之さんから触ってもらうの初めて」 「そうだったか?」 「ん……ドキドキする。もっと触って、俺のこともっと――」  ナツが熱っぽい息を吐きながらしがみついてくる。その声に応えようと、隆之は愛撫を続けた。ツンと尖ってきたそこを押し潰すようにすると、ナツは気持ちよさげに身もだえる。 「っん、あ……」  感じ入った表情にますます煽られていく。隆之はナツの体をそっと押し倒し、今度は反対側の突起を口に含んでやった。  軽く歯を立てて吸い上げ、また指の方でも爪先で摘まんだり引っ掻いたりを繰り返す。するとナツの反応はより顕著なものになって、いよいよ耐えられなくなったのか、こちらの頭を掻き抱いてきた。 「ね、もう我慢できない……お風呂入ろ?」  ナツはすっかり蕩けきっていた。  隆之は頷くと、彼を連れて浴室へと向かう。シャワーを済ませる間にも興奮は冷めやらず、さらにはナツが全身に口づけてくるものだから、熱っぽい空気に眩暈がするようだった。 「一回抜いちゃおうよ。俺、ベッドまでもたないや」 「抜く、って……」 「ほーら、触り合いっこ」  言いつつ、ナツが屹立を握ってきた。  と、同時に目で合図されて、隆之もおずおずとナツのものを握り込む。そこはまだ触れていないというのに、しっかりと芯を持って勃ち上がっていた。 「どっちが先イカせられるか、勝負しない?」 「それは君に分がありすぎるだろ」 「んー? そんなのわかんないじゃん?」  ナツはニヤリとしてみせると、こちらのモノを上下に扱き始める。  快感に隆之は小さく吐息を漏らした。敏感な部分を的確に刺激され、下腹部に甘い疼きが生まれてくる。 「っ、くそ」 「あっ……ハハ、きもちい」  負けじと隆之も手を動かし、ナツの欲望を強めに擦った。先端からは透明な雫が滲み出ており、時折それを塗り広げるようにして扱けば、ナツは眉根を寄せて喘ぐ。 「ん、は……もう、隆之さんってば上手。やばいなあ、俺の方が先イッちゃうかも」  だが、すぐに反撃に転じてきて、こちらの鈴口をぐりぐりと指先で弄んできた。思わず腰を引くも、ナツはしつこく追いかけて先端を刺激し続ける。 「おい、そこばっか……」 「アハッ、いいトコはっけーん。チンポもビクビクってしてきた――このままイッちゃいそ?」  そこは確かに、絶頂が近いことを示すかのように脈打ち始めていた。  しかし、一方的に責め立てられるのも気に食わない。隆之は思い切って身を寄せると、つうっとナツの耳朶を舐め上げた。 「ひゃ、あ!?」  途端にナツは甲高い声を出す。ついでに甘噛みしてやれば、いじらしく体をビクビクとさせた。 「あっん……やだ、それ、ズリぃって」 「これくらいのハンデ、あってもいいだろう?」  耳元に息を吹きかけながら、ナツの手の動きを真似るようにして、亀頭を中心に捏ね回す。  互いの性器を慰め合ううちに、先に限界を迎えたのはナツの方だった。 「あっ、だめ、イく、イッちゃうからあ――あ、あぁっ」  びゅるっ、と勢いよく白濁が噴き出す。それが腹にかかるのを感じながら、隆之もまた果てていた。

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