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 抱かれてもいいとは思ったって先輩とはすれ違う日々。  朝早い先輩は夜は俺が塾のバイトを終えて帰宅する頃にはもう寝ているし、土日だって持ち帰りの仕事があると断られたり、俺自身もたまに助っ人を頼まれて引っ越しのバイトをしていたりして文字通り会えない。  メッセージは無視だし電話は出てくれてもすぐに切る。  正直、告る前の方が会えた気がしたが、そんなことは今更言っても変わらない。 「うーん……」  日曜日、引っ越しのバイトを終えてさすがにグッタリの俺は風呂からあがって髪を拭きながら部屋に戻った。  髪を乾かさずにいると美容師である城くんに怒られるが、今はまだ帰宅していないのでバレることはない。  スマホを手にするとつい先輩に電話をしたくなるが、何とか思い留まった。  まだ二十時前だが週始めの月曜日に備えて先輩が早く寝てしまうことを知ったからだ。 「……とにかく、やってみる……か?」  一度大きく息を吐き出してから買ってきたローションを取り出してみる。  ベッドから掛け布団を退けて、バスタオルを敷いて……でも、やっぱり怖気づいてその場でしゃがみ込んだ。  ネットで調べてみた準備。  それは正しいのかはわからないけど、風呂でやってみた。  いまいちできた気がしないんだが。  で、慣らしてみようと思ったがこのザマだ。  いっそのこと城くんにやってもらおうか、とも思ったがそれはさすがに止めた。  いくらなんでも無茶過ぎる。  でも、父さんはその準備をしているはずで、慣らしてきた……そう思うと家事も何もできない父さんも凄い人に思えた。

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