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 部屋に戻ってそのままベッドに転がる。  だが、相変わらず返信もないメッセージの画面を見つめてため息を吐くしかない。  時刻は二十二時を過ぎていたが、あまりにも悲しくて寂しくなってきて発信に指を伸ばす。  押すギリギリで指を外したが、そのままスマホを落としそうになって何とか掴んだ。 「あっぶね」  顔面直撃は免れてホッと息を吐き出すと、 『タク?何か用か?』  僅かに声が聞こえて慌てて起き上がる。  周りを見ても誰もいない。  まさかと手の中にあるスマホに目をやると、それは確かに先輩と繋がっていた。 『おい!用ないなら切るぞ』  聞こえて急いで耳に押し当てる。 「いや!待った!!」 『うるせぇよ』 「すいません」  謝りつつ顔がニヤけてしまった。  先輩の声が聞けただけ。  それなのにこんなにも嬉しいなんて。 『どーした?』 「いや、好きだなって……」 『は!?おまっ何言って!!』  パッとこの前も照れてすぐに赤くなった先輩の顔が頭に浮かぶ。 「先輩、俺、抱かれてもいいですよ」 『は?』 「えーっと、ネコ?俺、そっちでもいいですよ」  想像もできなかったはずなのにすんなりと言葉になって自分でも驚いた。  先輩の声を聞いただけで、先輩と居られるなら何だってできる気がするから。 『はぁ?準備も慣らしたこともねぇ奴が簡単に言うな!』  まぁ、先輩は怒ったみたいだけど。 「じゃあ、調べておきます」 『そんなくだらん用なら切るぞ!明日も朝早ぇんだよ!』  躊躇いもなく切られた電話。  でも、俺はほんのりと幸せを感じてスマホをキュッと胸に抱いた。

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