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土曜の昼。
「あれ?偶然ですね」
駅で声を掛けられて、その人物を認識した俺はどうしたって警戒してしまう。
目の前で微笑むのは春樹先生。
「あ、お疲れ様です」
先輩が俺の手からすり抜けて先生に挨拶するのを見てイラっとするのを止められない。
「買い物ですか?」
「はい。ちょっと衣装が寂しくて発表会用のリボンと……」
しかも、仕事の相談が始まって、俺は下手に先輩を引き剥がせなくなった。
どうしたって俺はその会話には入れない。ただ、
「ここの二階にあるお店のは解けにくいし見栄えもよくていいですよ!」
「そうなんですか!?じゃあ、後で見て来なきゃ!」
仕事の話なのに先輩の目はキラキラしていて安心する。
忙しそうではあるが、楽しそうな先輩は俺も見ていて嬉しかった。だが、
「今から一緒に行きますか?」
にっこり笑う先生の提案には眉を寄せる。
「いえ!そんなお手数おかけしては……」
先輩もこっちをチラッと見てちゃんと断ろうとしてくれてホッとしたのに、
「それか、ゆっくり見てきます?僕は拓翔くんとそこのカフェにでも居るので」
先生はとんでもないことを言い出した。
「はぁっ!?」
声が裏返ると、先生はちょっと寂しそうな顔をする。
「ゆっくり思い出話でもしません?昔、遊園地にも一緒に行ったでしょう?」
先生の言葉に驚いたような先輩がこっちを見上げていた。
先生と遊園地。
確かにぼんやりとではあるが記憶にある。
父さんと春樹先生と……なぜか三人で色々乗り物にも乗った気がする。
先生と個人的に?
よく考えたら……おかしい。
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