5 / 57

5 あまりに綺麗で息を呑む ※

 天音が漏らす吐息、ビクビクと震える身体、バスローブを握りしめる手、何もかもがクる。なんだこれ。信じられない、この俺が。  あの事故のあと、こんなに高ぶりを感じたことはない。  俺は人肌には飢えているが、行為自体は冷めてるとよく言われる。それなりに成り立つ程度にしか興奮を覚えない。ヒデには今日も一回かと文句を言われる。でも、天音なら何回でもできそうだ。  天音の反応に高揚しながらそんなことを考えていると、ふいに天音が俺のうなじを撫で、そして乳首にふれてきた。  どっちの手も、どこかぎこちないその動き。乳首のほうは遠慮がちにふれてくるから、たまらず笑ってしまった。 「っ、天音、くすぐったい」  仕返しにと、俺は耳をなぶるように舐めてやった。 「ん……っ、……っ……」  これだけしても消え入りそうにしか漏れない天音の喘ぎ声。  身体の震えもすごい。  もしかして俺は、ものすごい勘違いをしていたのかもしれない。  天音の『セフレしかいない』という言葉で、自分と同じ基準で考えてしまった。さすがに俺ほどじゃないにしても、それなりにいるのかと、こういう行為は慣れてるのかと勝手に思い込んだ。  でも、たとえセフレが一人でも『セフレしかいない』と言うかもしれないし、経験値なんて人それぞれだ。もしかすると天音は、それほど経験がないのかもしれない。 「天音、緊張してる? もっと力抜いて。声も抑えんな」  バスローブを脱がせた天音の身体は、白くて華奢で透き通るように綺麗で、また俺の下半身がずくんと疼く。  女の身体とは全く違う。ちゃんと骨ばった男の身体なのに、あまりに綺麗で息を呑んだ。  ――――ふれたい。  俺はまるで本能に従うように天音の身体にふれた。  ゆっくりと、そっと優しく。 「……ん……っ、ぁ……っ……」  どこを撫でてもビクビクと震え、かすかに漏らす控えめな声。 「マジか。天音、そういう感じ? ギャップやばいな。すごい……クる」 「……は……っぁ……」  耳元で喋るだけでも、わずかに背中を仰け反らせる。  まじでやばい。すげぇ可愛い……ほんとやばい。  ベッドに入るまでの天音は、無表情で遠慮のない強気な口調で、でも、その裏にどこか可愛さをにじませる不思議な子、そんな印象だった。  それなのになんなんだ。今の天音は、もう完全に小動物みたいな可愛らしさだ。  俺がなにをしても可愛く反応する。今までにないタイプのせいか、高揚感が半端ない。  ただ、天音の震えが少し気になった。緊張のせいだとしても尋常じゃない。感度がいいだけか?  天音は、吐息か喘ぎかわからない小さな可愛い声を上げながら、一生懸命に俺のバスローブの結び目を解こうとする。  俺の舌と手の愛撫に耐えられず、吐息を漏らしては指が止まる天音の可愛いさに、自然と口角が上がった。  俺の心はとっくに死んでいると思ってた。  でも、まだちゃんと生きてるんだと天音が教えてくれた。  天音が……教えてくれた。    ようやく結び目が解け、俺がバスローブを脱ぐと、天音はまた乳首にふれてきた。その指は、やっぱりどこかぎこちない。 「……ぁ……っ…………」  そして、また俺の愛撫に耐えられず、吐息と一緒に指の動きが止まる。  乳首にも天音の震えが伝わってきて、可愛すぎる……と悶えそうになった。  乳首に添えられているだけだった天音の指が離れていって、諦めたように腕を背中に回してきた。俺は思わず笑った。 「なに、もう諦めたの? もっとさわれよ、俺の乳首」  笑いながら顔を上げると、天音は瞳いっぱいに涙をためていた。  目が合うと、ハッとしたようにぎゅっと目を閉じて目尻から涙がこぼれ落ちる。 「天音? なんで泣いてる?」  俺が問いかけても何も答えない。  たった今、わずかに感情が見えた気がした天音の表情は、もう無表情だ。 「おい、天音? なんだよ……大丈夫か?」  嫌な予感がした。  もしかして、抱かれるのが怖い……?  いや、まさか……違うよな?  天音の無表情が少しでも変化しないか注視しながら、少し芯を持ちはじめてる天音のそれを優しく撫でてみた。 「はっ、……ぁ……っ……」  喘ぎ声と一緒にビクビクと腰が浮く。  表情はわずかに動いたが、恐怖心というよりも快楽にゆがんだように見えた。 「怖い……わけじゃねぇよな? 答えなかったらこのまま続けるぞ? 天音、どうした?」  なんで泣いた?  涙の理由は?  すると、天音がぎゅっと俺に抱きついて、震える声でささやいた。 「……きもち……いい……っ。とぉま……」  予想もしなかった『気持ちいい』という言葉と、舌っ足らずに呼ばれた俺の名に、ドクンと心臓が跳ね上がった。 「……っ、おま……っ。はぁ、マジか。こんな興奮するの久しぶり」  一気に熱を集めて硬くなった自分のもの。  いや……こんなことは、久しぶりどころか初めてかもしれないな。  

ともだちにシェアしよう!