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6 もうやめてあげられない ※
自分の変化が嬉しくて、そしてとにかく天音が可愛くて、俺は夢中で天音の身体に愛撫をした。キスをして舌を這わし、指先で優しく撫でる。
俺の愛撫に、か細い声で可愛く鳴く天音に、俺の身体は燃え上がるように熱くなる。ビクビクと震える天音を愛しいと感じている自分に気づき、思わず苦笑した。
愛しいってなんだよ。ただのセフレだろ。
人間、興奮すると思考がおかしくなるんだな。
「……ぁっ、……と……まっ、とぉま……っ……」
だんだんと天音の無表情がゆるんでいく。素直に感じてる天音の表情……やばい。そして、うわ言のように何度も呼ばれる俺の名前は、さらにやばい。
舌っ足らずなそれが耳に届くとゾクゾクして、なぜかたまらない気分になる。
「マジやばい……天音。なんでそんな可愛いんだよお前」
……ちょっと待て。なんで俺、ドキドキしてるんだ。
天音が可愛すぎるからだ。
新鮮で物珍しくて、だから心臓が暴れるんだろ。
天音の色の薄い小さな乳首を口に含むと「ぁっ……」と、小さいけれどはっきりとした喘ぎ声が漏れる。
俺は嬉しくなって乳首に吸い付き舐め上げながら、天音の後ろの孔にふれた。
「あっ……!」
今日一番の大きな声を上げて、天音が腰を浮かせてよがる。
「すごい感度いいな。中はどんな感じか楽しみだな?」
そう言いながら、焦らすように孔を撫で続けた。天音の反応がよくて楽しくて意地悪したくなる。
天音の吐息がどんどん切なげになってきて、俺のそこはもう痛いくらいに張り詰めていた。
天音が自分で解した孔は、もう受け入れるには充分だったが、見ると予想どおり綺麗すぎた。使い込まれた様子が全くない。
これはやっぱりセフレは一人かな。いても二人。それもたぶん、頻繁にはやらない相手。それか……最近始まった関係か。
こんなに震えるくらい緊張してるんだ。すげぇ優しく抱いてやらなきゃな。
「ほしい? いいよ。まず指な? ゆっくり一本から」
宣言どおりにゆっくりと指を埋めていく。
震えがいっそう強くなった。
本当に……心配ないんだよな?
奥まで埋めた指をゆっくりと引き抜くと「と……ま?」とまた可愛く呼ばれた。
「それ、もっかい言って?」
そうお願いしてみると、天音が切なげにゆがんだ顔で俺の名を繰り返した。
「とぉ……ま?」
「あー……かわい。何回も言わせたくなるな」
天音の舌っ足らずな名前呼びがクセになりそうだ。
ふたたび孔に指を入れ、天音のいいとこを探す。
可愛く鳴くところを見つけた、と思ったとき、胸を撫でていた俺の手を天音がぎゅっと握りしめてきた。
ほんと、なにその反応。可愛すぎだろ。
指を絡めて握り返すと、さらにぎゅっと返ってくる。天音の何もかもがいちいちクる。
セフレとやりながら手を繋ぐなんて初めてだった。
すがりつくようにぎゅっと握ってくる天音がほんとに可愛いすぎる。
ギャップやばすぎだろ……。
天音がトロトロにとろけるまで指だけにしよう。少しでも緊張をほぐしてやりたい。
もどかしく感じるように少し意地悪をしながら、天音のいいところを攻めると「ンぁぁ……っ!」といい声で鳴いてよがる。
控えめな声もクるが、これもやばい……。
「……なん……だろな。天音の声マジでやばいわ。ゾクゾクする。……っつか、お前ずっと震えてるけど……なんでだ? 感じてるだけか?」
後ろを愛撫し始めてから、さらに震えがひどくなった。
やっぱり怖がってるからじゃないかと心配になる。
セフレしかいないことも、誰も好きにならないと言い切るところも気になる。やっぱり天音には何かあるんじゃないだろうか。
それでも天音は「きも……ちぃ……と……ま……」と、吐息混じりに答えた。
「……ん、ならよかった」
言いたくないことなのかもしれない。
終わったあとにもう一度だけ聞いてみるか。
天音がうつぶせがいいと言うから、今日は後ろからすることにした。天音の顔を見ながらしたかったけれど、少しでも天音の慣れてるほうでやってあげたい。
四つん這いなった天音に、今度は指二本で丁寧に慣らす。
ほかのセフレはみんなあきらかに慣れているから、ここまで丁寧に後ろを慣らしたことはない。そう思ってから、あ……一人だけいたな、と思い出す。痛い経験しかしたことがないという子を抱いたとき。あのときも、怖がらせないように丁寧に時間をかけた。
そう思い出してから、ギクリとする。
天音の震えは、あのときの子にそっくりだ。
いや、考えすぎか……?
「天音、ずっと震えてんのってほんとに気持ちいからか?」
聞いたって素直に答えるわけない。
わかってても聞かずにはいられなかった。
「ん……きもちぃ……っ。あたま変に……なりそ……っ。……ぁ……っ」
やっぱり答えないか。
「……ん、そっか」
ほかのセフレだろうか。
乱暴に抱かれてるんだろうか。
こんなに可愛い天音を、どこの誰が乱暴にしてんだよ。
怒りがフツフツと湧いてくる。
指を三本に増やし、もう充分だというくらいに慣らした頃には、天音は腰を上げているのもやっとなほど全身を震わせていた。
怖いなら……もうやめてあげたいという気持ちと、俺が死ぬほど優しく抱いてやりたいという気持ちで葛藤する。
でも、なによりもこの可愛い天音を抱きたくて仕方なかった。
そこで俺は、はたとなった。
いま、完全に事故のことを忘れてた。
いつも人肌に癒されながら、常に頭の中にある『俺が殺した』という罪悪感。
いまは少しも頭になかった。
天音しか見てなかった。
天音が心配で、可愛くて、天音がほしいという気持ちしかなかった。
天音……お前すげぇな……。
この俺に色を与えて、笑顔にさせて、罪悪感まで忘れさせるなんて。
天音を思うなら、今日は入れる前でやめるべきだ。
怖くないと思えるまで、天音自身が入れてほしいと思えるまで、ゆっくり時間をかけてあげるべきだ。
わかっているのに、天音がほしくてたまらない。
こんな気持ちは本当に初めてだ。
天音の背中にキスを落として舐め上げた。
「あぁ……っ!」
天音の声に俺のものが反応する。もう限界だと訴えてくる。
「……天音、ごめん」
お前がほしい。
もうやめてあげられない。ほんと、ごめん。
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