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第1話

「鎖でもつけて蹴飛ばしてやろうか。」 パソコンの画面から冷徹な声で喋りかけてくる声を静かに聴きながら後ろを自分で玩具を使って行き場のない性欲を満たしていた。 「んっ…んんっ…ぁあっ!!」 絶頂を迎え白濁液を吐き出す。 余韻に浸りながらティッシュを2~3枚取り出し、拭き取る男の名前は葛城 樵(かつらぎ しょう)。 彼は生粋のネコであるが、独占欲が非常に強いのでいつも恋人を作っても愛が重すぎると言って捨てられてしまう始末である。 つい先月も、同じように愛が重いと言われ捨てられてしまった。 暫くシていないため身体は疼く。 かと言ってセックスフレンドを作る勇気もなかった。 だから自分一人でドM向けの動画サイトを漁り、自慰行為を繰り返す。 汗を流すべく風呂へ入り、適当な寝間着を着て寝室へ向かう。 (あぁ、淋しい…誰かに深く愛して欲しい…ほんと、死んじゃうくらいに…) 今は10月、特に人肌が恋しくなる季節に彼は一人淋しく布団へ潜り込み意識を手放していった。 朝8時、細く真っ黒な髪についた寝癖を整えながら、いつものように電車で会社へ向かう。 乗り始め4駅は比較的空いてるため、長時間立ちっぱなしというのもあまり無かった。 高校生、サラリーマンの何人かはどこか気だるそうな顔でスマホを見たり、細長く畳んだ新聞を読んでいた。 一方、樵は通勤電車が苦ではなかった。 その理由は、乗り始めて3番目の停車した駅から乗車してきた。 190cmとスラッとした高身長、色素は薄いがしっかりとした髪の毛に少し隠れたツツジ色の瞳が目立つ切れ目、彼は泉 凛太郎(いずみ りんたろう)。 樵の務めている会社の本社の社長の息子で頭脳明晰、容姿端麗と誰もが認めるいわゆる完璧人間である。 樵は凛太郎の先輩に当たるが物覚えが良く、要領も良いので教えることなんて無いに等しかった。 彼は男女構わず人気なのだが、笑顔を見せず仏頂面で寡黙なため近寄り難い。 しかし樵にとってはそこがいいのだろう。 いつも外回りや会社の少し離れた席からでもついつい目で追ってしまう。 家で1人の時も凛太郎に犯されることを想像しながら後ろを満足させることもあった。 乗車してきた凛太郎が樵を見つけると歩み寄る。 その間も周りの男女は彼に釘付けだった。 凛とした低い声で短く挨拶した。 「おはようございます。」 「うん。おはよう。」 そう答えると樵は立ち上がり、ドアの近くへ向かった。 それに凛太郎もついて行き、ドアの前で向かいあわせで降りる駅を待つ。 この時間も樵にとっては有意義な時間だ。 一日の中で1番凛太郎と近くにいれるのだ。 電車が揺れる度に凛太郎から淡い香水の良い香りが漂ってくる。 その香りだけでうっとりしそうになるが、なんとか自我を保ち電車を過ごす。 会社に着くと向かいの席から声が聞こえてくる。 「おう、葛城!おっはようさんっ。」 「おはよう。お前は朝から元気だなぁ?細貝。」 「そういうお前はいつもと同じく満足気な顔だなぁ。」 彼は細貝 拓真(ほそかい たくま)。 樵の同僚で高校からの友人である。 彼だけにはゲイであるとカミングアウトしており、結婚した今でも独り身の樵を飲みに連れては相談に乗っていた。 樵の隣に座った凛太郎も細貝に挨拶する。 「おはようございます。細貝先輩。」 「よ!泉、今日もクールだなぁ。」 「先輩の爽やかさには負けますよ。」 「言うなぁ!」 細貝は人当たりがよく気さくな性格であるため、凛太郎も話しやすいらしい。 五分ほど話して、朝礼が始まる。 部長の話を聞くふりをしながら凛太郎へチラッと視線を向ける。 20cmも身長が離れているので下から見上げる形になるがそれでも凛太郎の美貌が伺える。 樵が気づいた頃には朝礼が終わっており皆わらわらと自分のデスクへと戻って行っていた。 樵も慌てて自分のデスクへ戻り自分の仕事を始めるのであった。

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