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其の壱・猫又の心(2)

 でも……いくら妖怪だからといっても、お腹は必ず空くし、飲まず食わずだったから、意識も朦朧(もうろう)としてくる。  その時に、初めて、蒼さんは怒ったんだ。 「いい加減に食べなさい!」って……。  ボクは、ボクのことを真剣に心配してくれる蒼さんの心が嬉しくて、涙をぽろぽろ流したのを今でも覚えている。  それからだ。  ボクは、蒼さんがお仕事で吉凶を占う時とか、退魔をする時だって、彼が行くところなら、どんな所でもついていった。  耳があっても、尻尾があっても、蒼さんはボクとずっと一緒にいてくれるんだ。 「心、おいで」  呼ばれて、簀の子の上に行けば、手招きをして、膝の上においでと言ってくれる。  こういう時のボクは人間にはならない。  猫又のまま、お膝の上に乗っかっちゃうんだ。  頭上は、雲がひとつもない、青いお空がある。  ああ、お日さまポカポカ、気持ち好い……。  大好きな人のお膝の上で、丸まっていると……。  ポンポン。  大きな手のひらが、とても優しく、ボクの頭を撫でてくれた。  ボク、もう寂しくないよ。  あたたかい、蒼さんがいるから……だから、とても幸せなんだ。  蒼さん、大好きだよ。  腕にスリスリしたら、蒼さんは、ボクのお口に唇を落とした。 「ずっと一緒だよ」  そう言って……。  えへへ、嬉しいな。  ずっと、ず~っと、一緒だね。  **猫又の心・完**

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