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其の弐・大和の国より異形なものあらはる。(2)

 ――時は同じくして、大和の国にある広い屋敷に、ひとりの陰陽師がいた。  年の頃なら二十五歳前後。名は、小野木 蒼(おのぎ あおい)。涼やかな双眸に、薄い唇。腰まである漆黒の髪は後ろに束ね、白の狩衣に身を包んで簀の子に座している。  彼は膝の上にある猫の頭を撫で、月が照らす薄闇を見つめていた。  膝の上に乗っているのは、猫にあらず。猫又という化け猫で、名は(しん)という。  その心、艶やかな毛並みの色は茶色で、耳の部分だけが黒い。一見すると普通の猫のように見えるが、尾はふたつに分かれている。  化け猫は本来、人の前に姿を現さず、人や物に化けて悪さをして人びとを困らせるのではあるが、彼だけは違った。  というのも、心は化け猫であるものの、化けるということが上手くできず、一族から排除されてしまったのだ。  路頭に迷っていたところで蒼と出会い、共に暮らしている。

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