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其の弐・大和の国より異形なものあらはる。(8)
「たれかが呪をもって空の印を解いてしまったのであろう」
「いったいたれが、何の目的で印を解いたのかな?」
「さて……。どうであろうな。故意に解いたのかも知れぬし、ちょっとした事故で解いてしまったやもしれぬ。法隆寺には何の悪意も感じなかったからね、異なる次元の者の仕業ということも考えられる」
「ふうん? 蒼、お腹空いた」
心にとっては食欲の方が先なのだろう。蒼の言葉は、心には理解できなかったようだ。曖昧 に頷くと、広い胸に頭を寄せ、空腹を訴えた。
「そうか、では、心が好きなニシンの煮付けでも用意するとしよう」
「やった!」
ふたりは月明かりが照らす夜道を進んでいく。
静かな夏の夜。どこからか吹く、心地良い風に吹かれながら……。
―大和の国より異形なものあらはる。完―
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