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其の参・鬼、西瓜を食す。(3)
「もし、もし、お助けください!!」
伊助は藁にもすがる思いで、闇の中を進む牛車に駆け寄った。
牛車の中を覗けば、年の頃なら二十五歳前後。白の狩衣に身を包んでいる男がひとり。その男の膝の上には、可愛らしい子猫が身体を丸めていた。
しかしその猫、普通の猫ではない。尾はふたつに分かれている。猫又という妖しに違いないと、伊助は思った。
伊助は、男の姿を目にすると、どっと泣き崩れた。
「助けてください、どうかお願いです」
伊助は男の足下まで頭を下げ、懇願した。
「どういうことなのか、お伺いいたしましょう」
その声音はとても穏やかで、静寂にも似たものだった。
彼の膝にいる猫又は黒の耳をヒクヒクと動かしている。まるで何かを警戒しているようだ。
もしかすると、この猫もまた、背後から差し迫ってくる『あれ』の存在に気づいているのだろうか。
伊助の背筋が凍る。
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