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其の参・鬼、西瓜を食す。(5)
その異形な姿の恐ろしさに、伊助は自分の名を呼ぶ主から何とか屋敷中を逃げ回っていると――。
「喰いたや、喰いたや……伊助、喰いたや」
掠れた声は地の底からのような、おどろおどろしい声へと変化した。
「見つけた、伊助」
恐ろしい速さをもって地を這い、目の前までやって来きたのだ。
命からがら逃げ果せ、そうして今ここにいることをやっとのことで話した。
……ずる、ずるり。
背後から、地面を這う音が聞こえてくる。
「ああ、来ました。どうか、どうかお助けください」
……ギギギギギィ!
猫又は全身の艶やかな毛を逆撫で、男の膝の上で細い声を出し、主の声がする方を向いて威嚇している。
蒼は猫又の頭を撫で、大丈夫だと宥めてやると、伊助を牛車の中に引き入れた。
それからなにやら呪文のようなものを口にする。
「伊助、どこじゃ。どこにおる。喉じゃ、喉が乾いてならぬ。お前の血をおくれ」
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