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チョコレートコスモス

俺は恋人に二股をかけられている。 だが別れる勇気もなく、ズルズルと関係を引きずっている。 今日も、本当はデートの約束があったのにバイトが遅くまであったから無しと言われてしまった。 でも、俺は知っている。本当は男を連れ込んで朝まで寝てたことを。 まっすぐ帰るのも勿体ないからどこか回ろうかと辺りを見渡した時、小さな花屋を見つけた。 何となく気になって店先の花を眺めると、珍しい花がある。 (コスモス…にしては色が黒っぽいと言うか紫と言うか…) 「それ、チョコレートコスモスという品種です。」 「えっ…。」 いつの間にいたのか、爽やかな茶髪のお兄さんが笑顔で俺に話しかけてくる。 俺のすぐ隣にしゃがみ込んで、そのコスモスを一輪取り出して香りを嗅いだ。 「…これ、ほんのりチョコレートの匂いがするんです。花言葉は『恋の終わり』とか…ちょっと悲しいんですけど、僕の好きな花なんです。匂い、嗅いでみますか?」 「ホントだ、ちょっと甘い匂い…。俺も、これ好きかも。」 「それはよかった。」 へにゃりと笑う店員さんが、すごく可愛かった。 その笑顔を見て、俺は決意した。 「これ、1本ください。」

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