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タイムスリップ
賑やかな居酒屋のなかで、俺は幼馴染みの「リョウマ」と酒を呑んでいた。
俺たちは田舎育ちで、いつも森や川に入ってはクタクタになるまで遊んでいた。 高校までは一緒にいて、大学に入る頃にはお互い忙しくてあまり連絡は取れないでいた。その理由の中には、俺がリョウマの事が好きでそれを悟られないように距離を置くためでもあった。
しかし、リョウマがどうしても一緒に呑みたいとのことで、そんなことを忘れて酔いながら昔話に花を咲かせている。
「いやぁ懐かしいなぁ、秘密基地作ったよなぁ!」
「あぁ作った!今考えたら結構すごいもんだよなぁ、あの頃は遊ぶことしか考えなくてさぁ。」
「そうだなぁ、いっつも二人で泥まみれになって遊んでは怒られてたなぁ。」
焼き鳥を咀嚼しながら昔へ想いを馳せる。
その時、ふと思い出した。
「そういえば、二人でタイムカプセルを木の根元に埋めたっけなぁ。あの時は確か十歳そこらか…。」
「あぁ、十年後に掘り起こそうなって約束したなぁ。とっくに十年経っちまったけど…そうだ!掘り起こしに行こうぜ!明日、土曜だし帰省もかねてさ!」
「お!良いなぁ、じゃあ明日一緒に帰ろう!」
それから、俺達は数年振りに地元へ帰ってきた。
随分と田舎なのは変わらず、それが嬉しいような寂しいような。二人で今まで遊んできた所をまわりながら森の中の秘密基地へと向かった。
かつて秘密基地だった大木は今も立派に立っていた。その大木の根元に下手くそな字で「リョウマ、ショウゴの宝物」と彫られていた。早速地面を掘り起こすと、缶の箱が出てきた。開けると随分と埃を被っていたようで、二人して咳き込む。中にはビー玉を宝石に見立てた指輪のようなものが二つ入っていて、奥底にはお互いに認めたであろう手紙が一通ずつ入っていた。
俺もリョウマも何を書いたのか忘れている様で、ワクワクして読みはじめる。
『ショウゴへ
オレはお前がすきだ!
ともだちとしても好きだけど、もっとうえのすきだ。
きっと10ねんごもかわらない、オレはお前がずっとすきだ!
お前もおなじキモチだといいな。』
上手くもない字で俺への気持ちが書かれていた。
あまりの衝撃でリョウマへと視線をやると、あちらも驚いたようにこちらを見ていた。
俺が戸惑っていると、リョウマが俺を抱き締めた。
「何だよ、もっと早く…開ければ良かった…。」
リョウマの声は震えて、涙ぐんだように聞こえる。
俺は未だに状況が飲み込めず、困惑していた。
「こ、これは…現実なのか…?夢じゃ、ないよな。」
「夢な訳があるか、ちゃんと現実だ…。」
俺達は、かつて秘密基地だった大木の下で涙を流しながら抱き締め合い、お互いの体温を感じ取っていた。
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