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36.9℃
先天性無痛無汗症(せんてんせいむつうむかんしょう)、俺はこの病気と17年間共にしてきた。
痛みもない熱さも冷たさも感じられない。そのせいで毎日怪我を作ることは日常茶飯事で、そのせいで回りの大人達を困らせてきた。中には痛みを感じない事を面白がってわざと怪我をさせようとする奴もいた。
そんな中、「ユウキ」だけは違った。小学校の頃からの付き合いで、俺が怪我をしたのにまるで自分が怪我をしたかのように、泣いて俺の傷を手当てする。
俺とユウキはいつも一緒で、友達…親友以上の想いを俺達は抱いていた。
今日も学校終わりに俺の部屋で二人で過ごしている。
「なぁ、ユウキ。」
「ん、何?」
「暖かいって気持ちいいのか?」
「あ~、うん気持ちいいよ。」
「そうなのか…。」
何となく聞いてみた質問をしてまたスマホに目線を戻した俺に、さっきまでうつ伏せになっていたユウキが起き上がって両腕を広げて見せた。
「どうした?」
「ハグって、人の体温を感じられて暖かいんだよ。」
「でも、俺はわからないぞ。」
「やってみなきゃ分からないでしょ?ほら、僕から行くから腕広げて。」
そう言って俺の腕の中に入ってきた。首筋が鼻先に当たると、ユウキの匂いが色濃く香る。少し蜂蜜みたいな甘さがあって、でも甘ったるい訳じゃない…ずっと嗅いでいたいような匂いだ。
ギュッとユウキを包み込むと衣服越しでも心臓が全身へ血を通わせている音、ユウキが生きている音が聞こえる。
心が満たされていく。
「…ナギサ、どう?」
「あぁ、温度的な暖かさは良く分からん。」
「えへへ、そっか…。」
「でも、心が満たされるし心地が良い…。この感覚が俺にとって暖かいなのかもしれないな。」
「そっかぁ、えへへっ良かったぁ。」
「なぁ、もう少し…このままでも良いか?」
「僕も、まだナギサとこうしてたい…。」
あぁ、幸せだなぁ。
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