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 目を覚ますとなぜか抱きしめられていた。北口さん、と呼びかけると眠そうにまぶたを開ける。 「ん、おはよ……」  おはようございます、と肌をすり寄せる。 「帰ってなかったんですね」  まあな、と北口は後ろに手を伸ばした。 「っ、ちょっと……」  感触を確かめるように尻を揉みしだかれて、俺は身を捩らせた。 「お前は本当に触り心地がいいな」 「……んっ、やだ、あ……ッ」  北口は割れ目をなぞった。孔がヒクヒクと蠢くのが分かる。 「しかも感度もいいんだもんな」 「やっ、もうやめ……」 「なんだ、欲しがってんのか?」  触るからでしょう、と反論しようとしたところで指が入ってきた。いいところを擦られて高い声が出る。 「あッ、ん……っ」 「朝だから指だけな?」  北口は二本目を挿入した。内壁を擦られて腰が動く。 「やっ、もっと……」  夜まで我慢、と指を引き抜かれる。さも楽しそうに笑う姿が憎らしい。 「今日大学行くだろ?」  うなずいて身を起こす。熱はまだ燻っていた。  講義終わり、大学の食堂で待ち合わせる。構内に人の姿はあまりなかった。 「よお」  朝以来だな、と北口は向かい側に座った。 「お前が服着てるの変な感じ」 「何言ってるんですか……」  指を絡められる。すり、と撫でられて俺は身を震わせた。 「ちょっと、誰かに見られたら……」 「誰もいねえよ」  物足りないんだろ、と力を入れられる。どうやっても振りほどけそうになかった。 「じゃあ部室行くか」 「今日は開いてないんじゃ……」 「おれ鍵開けんの得意なんだよ」  そう言って北口は手を離した。ついてこいと言わんばかりに歩き出す。俺はあとを追うしかなかった。 「あんまり声出すなよ?」  北口は俺を部室の壁に押し付けた。後ろ手に鍵をかける。 「ふ……、んぅ……」  見つめ合いながら舌を絡める。北口は目を細めていた。熱くて柔らかい舌を貪る。  時々外から足音が聞こえてくる。そのたびに身体をびくつかせる俺を、北口は楽しそうに眺めていた。 「やっぱりこんなところで駄目ですって……んっ」 「大丈夫だよ」と北口は膝を股間にぐりぐりと当てた。 「でもお前の声が聞けないのは残念だな」  北口は下半身を刺激し続ける。俺はだんだん喘ぎが抑えられなくなっていた。 「ん……っ、んぅう……ッ、ふぁ、んッ」  北口のものが固くなっているのが分かった。後ろ向け、と言われて壁に手をつく。早く欲しくてたまらない。  ジーンズと下着を脱がされる。後ろに固いそれが当たった瞬間、ドアノブががちゃがちゃと回った。 「誰かいるのか?」  息を詰めて動きを止める。ややあって北口が応えた。 「……部長か?」 「北口か。何やってんだよ」 「あのー、忘れ物取りに来たんだよ。中々見つからなくて」  言いながら北口は俺の腰をつかんだ。熱いそれが中に入ってくる。何を考えてるんだ、と思うが快楽には勝てない。 「俺も用事があるからさ。早くしろよ」 「なるべくそうする」と北口はピストンを速めた。間違っても声が出せない、という状況に余計感じてしまう。 「てか北口、ここどうやって入ったんだよ」 「開いてたから」  北口は息をするように嘘をついた。部長の問いかけに次々答えていく。腰の動きは緩めずに。 「鍵かけてるのは何で」 「忘れ物探すのに邪魔されたくなかったんだよ」  あっそう、と言いながらも部長はドアの前から動かない。 「……もう無理ですって、北口さん……!」  小声で呼びかけるが北口はピストンを止めない。根本を握られ、俺はイくこともできなかった。 「おい、まだか?」 「ああ、今出る」  動きが激しくなる。奥に熱いものが注ぎ込まれて、俺は身体に力が入らなくなった。 「……っあ、ん……ッ」  ものが引き抜かれる。服整えろ、と囁かれて俺は身を起こした。何とかジーンズを履いて立ち上がる。北口はこちらの様子を確認してからドアを開けた。 「悪い、待たせた」 「ああ……。なんだ、芦屋もいたのか?」 「あ、はい……」  驚いたような表情の部長から目をそらす。 「じゃ、また顔出すから」  北口が歩き出す。あとをついていく俺を、部長は怪訝そうに見送っていた。

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