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第18話 先に惚れた方が弱いものなのだ
今朝自宅玄関にて
午前の講義があるオレは彗ちゃんより先に家を出た
彗ちゃんは午後からみたいなので講義終わりにサークル室で待ち合わせることになっている
「じゃあ、先に大学いってくるね」
「ん、行ってらっしゃい。」
ちゅ
「?!?!彗ちゃん!!」
「はよ、行け」
「うん!!いってきます!!」
お見送りのキスをされた頬を撫でながら1日を過ごした
ずっとにまにましていたら一緒に講義を受けていた友人に気持ち悪いぞと言われた
しかし、今のオレは何を言われてもへっちゃらなのだ
だってオレにはもう彗ちゃんという可愛い可愛い恋人がいるのだから
「んへへへ…」
「うわ、こいつ、今度は声出して笑い始めたぞ。」
「不気味」
なんとでもいうがいいさ!
あー早く彗ちゃんに会いたい
「…!!」
「ははっ悪い悪い」
「もう!からかわないでください!」
講義が終わってサークル室に向かうと中から声が聞こえる
彗ちゃんとあと1人
この声は、熊田先輩…?
「っ!彗ちゃん!!」
慌てて扉を開け駆け寄って先輩から隠すように抱きしめて熊田先輩を睨みつける
「ぐるるるるる」
「わっ 虎狛?!」
「おー、よっ犬塚」
「…どうもっす」
「あっはは、そんなに警戒しなくても何にもしてないよ」
両手をひらひらとふって苦笑いする
「そうなの?」
腕の中で暴れている彗ちゃんに聞くと
そうだよ、だから威嚇すんなと言われた
それならと解放する
「はぁ…虎狛。お前気にしないんじゃなかったのか」
「うぐ…それは、そうだけど。流石にあの話聞いて2人きりにするのは…
それに彗ちゃんえっちだから、先輩誘惑するしれないし…」
「はぁ?!虎狛お前今なんていった?!」
「だってぇ……」
ポカポカと彗ちゃんにパンチされる
「ふっ…あははは!!!
お前らほんとに仲良いな。」
「仲良し超えて、恋人っすからね!!」
「おっまえ!でかい声でいうなって!!」
顔を真っ赤にしてパンチしてくる彗ちゃん
めちゃくちゃ可愛い
「はははっ」
先輩はそんなオレたちのやりとりを見てお腹を抱えて笑っている
ひとしきり笑い合えた先輩が息を整えて、彗ちゃんの方を見る
その視線はとても優しくて、なんだかさみしそうだった
先輩がぽんぽんと彗ちゃんの頭を撫でる
「猫田、よかったな」
「…はい。ありがとうございます。」
「犬塚」
「なんすか…」
「はは、だから警戒しなくても大丈夫だって。
猫田のこと、頼むな」
「言われなくても!!!オレが幸せにします!!」
「…ばか。だから、声がでかいんだよ」
ドスっと横腹に照れ隠しの拳が叩き込まれた
「ほんとだぞー。外まで丸聞こえだったぜ」
「おわっ?!馬渕先輩!」
後ろの扉が開き声をかけられる
「おーっす。なんか騒がしいから外で聞いてたけど、猫田と犬塚はおめでただったんだな。
なんだー?飲み会の勢いでヤったのか??」
「なっ?!?!
なななななんにもななないっすよ!!ね?彗ちゃん?」
「まぁ、最後まではさせてくれなかったです、ね」
ほーん、最後まで は ねぇ
といってニヤニヤする馬渕先輩
「こら、香澄。後輩を揶揄うんじゃない。そういうのは、滅多に聞くもんじゃないだろ。」
熊田先輩が馬渕先輩を諌める
が、珍しく引くことなく、じとっと熊田先輩をみて
「へーー……ほーー???
酒の勢いで後輩を襲った先輩が言っても説得力がなぁ」
反論した
いつも素直にいうこと聞いてるから驚いた
いや…聞いてたか??
反論された熊田先輩がいつになく焦った様子で馬渕先輩の方へ駆け寄る
「んなっ?!おまっ、香澄!」
「犬塚〜気をつけろよ〜。こいつ、優しい先輩感出してるけど、中身は性欲モンスターだからな〜。」
「ちょっ、何言ってんだよっ」
「なんだよ、ほんとのことだろ?好きなやつとの約束ほったらかしたくせに欲求不満で後輩誘惑してセフレにしてんだもんなー」
「ちっが!!それは、お前が!その、まさか両思いだなんて思ってなかったから…」
「ふーん。それで寂しくて代わりにしましたーって?へーーー???」
「う…すみません、でした」
なんかすごいところを見せられた気がする
いつもと立場が真逆だ
というか
「あの、先輩たちって」
「ん?あー犬塚にはまだ言ってなかったっけ。俺と勇付き合ってんの」
「え?!じゃあ、彗ちゃんが言ってた熊田先輩の好きな人って」
彗ちゃんの方を向いて返事を求めると、こくりと頷いた
「そ、馬渕先輩のこと」
「ええ?!?!そう、だったんだ。
それにしても、なんかいつもと…」
立場というか、上下関係?というか
違いすぎる気がする
しゅんとしている熊田先輩とお説教している馬渕先輩
「いつもと真逆すぎる…」
「なはは!!
俺これだけはまだ根に持ってるからな。
ほんとに寂しかったんだぞ。なー?勇?」
「ぐっ申し訳ありません…」
「あの、、俺もすみません…」
「いやいや!猫田は謝らなくてもいいって!こいつが誘ったんだろ?なら、悪いのはこっちだ。」
「いや、でも、熊田先輩も寂しくて…」
「うん。知ってる。
そんな時に一番に頼ってくれなかったのが悔しいんだ…
だから!俺はこの先ずぅぅっっとこのネタで勇をイジると決めたのだ!」
ドヤァっと効果音がつきそうなくらいの勢いで宣言した
これは、ちょっと熊田先輩が不憫に思えてきた
いや、、自業自得なのか…??
でも、この先ずっとってことは馬渕先輩は熊田先輩と添い遂げるつもりで言ってるだろうし、ノロケ話だと言えばそうなのかもしれない
「ま、そういうことだから、もうこのモンスターが猫田に手を出すことはねぇよ。」
「モンスターって言わないでくれよ…」
俺が見張ってるから安心していいぞと言う先輩の笑顔は幸せそうに見えた
話を聞くと昨日の飲み会でオレにキスしようとしていたことを熊田先輩に咎められた馬渕先輩だったが、彗ちゃんの想い人がオレであると知った上で、2人に対してのちょっとした仕返しのつもりでやってやったとのことで…
馬渕先輩はおおらかで賑やかな陽キャかと思っていたが意外と嫉妬深いということを知った
あと、熊田先輩はしっかりしているようでそうでもないことも。ていうか、性欲モンスターって…
まさか、彗ちゃんもその影響で
「彗ちゃん、熊田先輩にはあんまり近寄っちゃダメだよ。モンスターがうつるかもしれない」
「なっ!犬塚、お前まで!」
「なははは!後輩からも警戒されてやんの。
まぁ俺だけにしとけってこった」
「う、言われなくてもそのつもりです…」
ほんとにいつもと立場が逆転しててなんか面白いなぁ
でも、先に惚れた方が弱いのはなんとなく、わかる
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