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第26話 湯船の下で
グランピング場からすこし歩いたところにある温泉
天然温泉とのことでこの施設の一つの目玉になっているとのことでかなり広くて綺麗だ
その分利用者も多いのだが
「あのさ、虎狛」
「なに?彗ちゃん」
「さっきからなんで周りちらちら気にしてるんだ?」
そうなのである。人が多いということは彗ちゃんの裸が一目に触れる機会が増えてしまうということ。つまり!!可愛い彗ちゃんの無自覚フェロモンに誘惑される男がいるかもしれない!警戒をしないわけがない!!
「なんでもないよ。彗ちゃんは気にしなくていいからさ、温泉入ろ?」
「………」
服を脱いでタオルで大事なところをしっかり隠したのを確認して浴室に向かおうと促すが、俯いたままオレの腰に巻かれたタオルを掴んで動こうとしない
「どうかした?」
「…デート中なんだから、周りばっかじゃなくて俺のことも見ろ」
オレにしか聞こえない声でそう言われてどきっとする
可愛すぎる…!!
確かに初めてのデートなんだからちゃんと彗ちゃんを目に焼き付けておかないと
しかし、今、目の前で耳まで赤くしているこの姿を写真に収められないのが悔やまれる。
「んへへへへ。ごめんね。寂しい思いさせちゃったみたいで。オレの彗ちゃんが他のやつに見られるのが嫌でちょっと警戒しすぎてたのかも」
「オレなんか別に誰も見てないだろ。むしろお前の方が見られてるんじゃないか?いい身体してるし…かっこいい、から」
突然褒められてこっちまで照れてしまう
かっこいいと思ってくれてたんだ
「むふふふ」
「〜〜〜っ!ほっほら!早く温泉!入るんだろ!?」
顔を真っ赤にしたままで浴場にむかって歩き出した。
「あっ待って!」
早足で歩く彗ちゃんを追いかけて隣に並び、顔を覗き込んでそらされていた視線を合わせた
少し睨まれたがさっきの一言を聞いたあとだとただの照れ隠しだとわかるのでむしろ可愛いが増すだけだ
浴場に入って掛け湯をしまずは身体を洗うためにシャワー台に並んで座った
もちろん彗ちゃんをなるたけ壁際に座らせた
「そーだ。久しぶりに洗いっこする?小さい頃よく一緒にお風呂入ったときにやってたよね」
「な!?なんでそんなこ…と……いや、そうだな。背中流すくらいなら、してもいい」
シャンプーを流して背中をこちらに向けてくれたのでタオルでボディソープを泡立てて優しく触れる
なんか懐かしい。昔は一緒にお風呂入ったときは洗いっこしてたもんな。にしてと、相変わらずすべすべで綺麗な肌。それにどことなくえっちな細い腰…このまま抱きしめたいけど絶対怒られるから今は我慢しなきゃ。あとで部屋に戻ってからにしよう
でも、ちょっとだけなら触れても、いいかな
タオル越しにしか触れられないのがもどかしくて我慢できず、そっとうなじから腰のあたりまで手でなぞってみた
「ひっぁ?!」
「わっ?!ごっごめん!大丈夫?」
「バカ虎狛!こんなとこでエロい触り方すんな」
「エロ?!いや、そんなつもりじゃ…うぅ、ごめんよ」
人がいるので小声でだが怒られてしまった
本当にそんなつもりではなかったのだけど…
さっきの声ちょっとエッチだったなぁ。もっとたくさん触ったら…
ダメダメ!意識したら反応しちゃう!!ブンブンといけない想像を振り払いながら泡を洗い流す
「はぁ…ほら、次お前の番。あっち向け」
「う、うん!よろしく!」
背中を向けると同じように彗ちゃんが背中を洗ってくれる。タオル越しだけど肌に触れられているという事実にさらに心臓がドキドキする
これ、思ったよりもやばいかもしれないなぁ
深呼吸しようと息を吸う
「どうした?どっかかゆいとこでもあった?」
「ううん!大丈夫!」
「ならいいけど。じゃ泡流すぞ」
「はーい」
バレなくてよかった…
身体を洗い終えて露天風呂があるとのことだったのでせっかくならと外に出た
まだ昼過ぎだから空は明るいが天気も良くていいキャンプ日和だ
湯船に浸かりほっと一息つく
長距離の電車とバス移動で固まった体がほぐれていく
「ふぅぅ…気持ちいー」
「ほんと、生き返る…はぁ、やっぱ温泉いいな」
二人並んで温泉を堪能する。骨身に染みるとはこういうことなのだろうか。彗ちゃんも満足してくれてるみたいだし温泉付きのところにしてよかった。なにより温まってほんのり色付いた顔をこんなに近くで見られるなんて…
「温泉最高…!!」
「急にどうした。さっきからなんか変だぞ?」
「んへへ。なんでもないよ」
「ふーん…変なやつ。でも、確かに最高だな。連れてきてくれてありがと」
最後まで言い終えずに湯船に深く浸かっていく
ふと、手に何かが触れたと思ったら指を絡め取られて握りしめられた
「彗ちゃん…なんか今日、デレの供給過多すぎない?いや、嬉しいけどさ」
「うるさい。デートなんだからいいだろ。別に」
「それは、そうだけど、色々我慢できなくなりそうで…」
「……別に我慢、しなくてもいい」
「うぇ?!い、いいの?!ほんとに?!」
「一日俺のこと好きにしていいって約束だし。あ、でも人がいるところで盛るなよ?そういうのは部屋戻ってから、な」
そう言ってからめた指を遊ばせながらニヤッと不敵に笑いかけられてドキッと心臓が大きく跳ねた
あぁぁぁ!温泉にもっと浸ってたいけど、早く部屋に戻りたい!!!
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