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talk.4 オカマと彼

竜之介は驚きすぎて身動きできず、愕然と闖入者を見上げた。 「まな、がわ、」 「やっぱり江ノ島じゃないか。」 特進クラスの真名川だった。 全国でも上位に入るほどの秀才で、当然のようにアルファなのだ。よりによって、真名川に見つかるなど何という運の悪さ。 一瞬先の悲劇に体が震える。 「こんな所に、ひとりでいったい、」 不審そうな声で問いながら、真名川がまた一歩足を踏み出す。そこが境界線だったかのように、二人の間に衝撃が走った。 ―――甘い、アルファの。 真名川のフェロモンを感じて、竜之介の体がドロリと熱を上げる。深く甘い息を吐くと、頭上で真名川が息を飲んだ音が聞こえた。 「オメガ、なのか?」 真名川の掠れた問いかけが夜の闇に消える。竜之介がオメガと思いもしなかったのか、受け入れ難いのか、流石の秀才も動揺しているらしい。 対して、竜之介といえば、籠るような熱に浮かされ頭がまるで働かないし、まともな言葉を吐ける状態にない。 アルファの真名川が近くにいるせいで、すっかりヒートが始まってしまったのだ。こうなってしまえば吐き出さずにはいられない。 ―――欲しい、欲しい。 雄が欲しくて仕方がないと竜之介の体が叫んでいる。もう限界だ。 「まな、」 荒い息を吐きながら見上げれば、いつものクールさからは予想もつないほど獰猛な雄の顔をした真名川がいた。 ぞくりとなる。 真名川から欲しがられているのだ。それが本能でしかないと知っていても嬉しかった。 ―――神さまも粋なプレゼントをくれるものね。 竜之介は罪悪感に苛まれつつも、1度の幸せを得るために、目の前の恋慕う人へ手を伸ばした。

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