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talk.3 オカマと彼
18年前のあの時、マーガレットはまだオカマではなく、江ノ島竜之介という17歳のただの男子高校生だった。
オメガである事と女になりたいとう気持ちを隠し、どこにでもいる平凡な男として、竜之介は皆に埋没するように生きていた。
「だからさぁ―――おい?リュウ、どうした?」
隣にいたクラスメイトの田仲から覗き込まれ、竜之介はグラグラする頭を押さえながら、苦笑いを返した。
「ちょっと人酔いしたかも。悪いけど、オレ、先に帰るな。」
竜之介の声に、前を歩いていた他のクラスメイトたちも足を止めて振り返る。
全員が着なれぬ浴衣を身に付けて、高校近くの祭りに来ていた。
今から屋台を冷やかして歩きながら、あわよくばナンパでもできればと思っている所だ。竜之介は全く興味がない話だが。
「マジかよ~。」
「どっかに座って休むか?」
「いや、帰るわ。本当、悪い。じゃあ。」
引き留めようとするクラスメイトたちに手を振って、竜之介は踵を返した。ドッと心拍数が上がっていく。
―――失敗したわね。
まずい事にヒートになりそうなのだ。
周期はまだ先のはずだったから油断していた。こんな人混みの中でヒートを起こすなど、考えただけでゾッとする。
人のいない方向を目指して突き進み、神社の裏側まで来ると人影は全くなくなった。抑制剤は財布に常備している。その場に座り込みながら、懐から財布を取り出した。
「ええと、確か、」
月は明るいとは云え、明かりが全くない暗闇で、財布の中が全く見えない。竜之介がモタモタと抑制剤を探していると、背後からジャリと小石を踏む音が聞こえ、
「江ノ島?」
同時に背後から掛かった声に、ギクリと体を強張らせた。
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