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talk.2 オカマと客
それで、何でオカマバーなんて来たのかしら。何か知りたい事があるんでしょ?
別に聞き出そうとしてる訳じゃないのよ。せっかく来てくれたのだし、と思っただけよ。
まあ、役に立たないかもしれないけれど。
いいわよ、いいわよ。何でも聞いて~。
え?匂い?
匂いがしないって―――、緒方さん、もしかして、アルファなの?
あら、気付かなかったわ。その香り、フェロモンだったのね。香水だと思ってたわ。
それにしても、よく分かったわね。
そうよ。アタシ、オメガなの。それに、店の子はみんなオメガ。
ほら、可愛い子が揃ってるでしょう?
ちょっと~、そこ、言葉に詰まらない。
アタシはしょうがないのよ。きっと祖先がゴリラだったんでしょうね。雌だったのかしら。
いいわね~。雌になりたいわ。逞しい雄に愛されたいわ。
顔がひきつってるわよ。
緒方さんって、意外と嘘が付けない人なのね。下ネタは苦手かしら?息をするように言うから、慣れてちょうだい。
あ、そうそう、匂いだったわね。話が進まないわ。何故かしら。
アタシからオメガの匂いがしないのは、項を噛まれてるからよ。随分と前の話だから、跡は消えてるわ。
番?
ふふ、いないわ。ちゃんと番がいたら、こんな店で働いてるわけないでしょ。
聞きたいの?別に、大した話でもないのだけど。
あれは、まだアタシがゴリラじゃなくて―――。
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