22 / 23
21
「もう無鉄砲なことはするな」
ジェレミーは口を離すと、冷たく囁いた。
「私が間に合わなかったら、撃たれて死んでいたぞ。捜査官なら、慎重に行動するべきだった」
「――俺に説教するために居残ったのか」
トラヴィスも低く言い返した。甘く舌を絡めあったキスの香りなど、唇にも残っていないような剣呑さだ。
「俺はお前の部下じゃない。説教したければ、他をあたれ」
腕を振り払おうとしたトラヴィスを、ジェレミーは強い力で押さえつける。
「お前を死なせないためなら、たとえお前の頭が怒りで丸焼きになろうとも全く構わない。詰ろうが貶そうが、好きにすればいい。その権利はお前にある」
そう言うと、また口を塞ぐ。トラヴィスを押さえつけながらの喰いつくようなキスだった。
「……ジェレミー……」
トラヴィスは首筋を舌で這われ、肌が震える。
「お前……急いで帰らなくていいのか……」
着ていたシャツの胸元を大きく広げられ、味わうように舐められてゆく。厚い胸板で突起している乳首も舌の先で触れられ、トラヴィスは小さく声を洩らした。
「アリスンは私を呼びつけたかっただけだ」
「愛されて……いるな」
「彼女が愛しているのは権力だ」
ジェレミーはトラヴィスを優しくベッドの上に寝かせた。それから上着を脱ぎ、ネクタイを緩める。
「今日は大変な一日だった。今夜はもう寝よう」
トラヴィスは傍らで全ての服を脱ぐジェレミーを黙って見上げた。
「お前の裸を見ながら寝るのか?」
「そうだ」
均整のとれた肉体が露になった。ジェレミーはトラヴィスの上に馬乗りになり、手を伸ばしてシャツのボタンをほどく。
「お前は怪我をしている。そんな時に、やれないだろう?」
シャツは前だけをはだけたままにして、手際よくズボンやトランクスも脱がし、トラヴィスの下半身が剥き出しになる。
「もう感じているのか?」
勃っているペニスにからかった。
「悪かったな。目の前でストリップショウなんかするな。余計に寝られないだろうが」
トラヴィスは思いっきり口悪く言ってやった。
ジェレミーはそんな戯れ言も愉しいかのように、軽く頬にキスをする。
「わかった。それじゃ寝かせてやろう、お坊ちゃま」
トラヴィスの足を押し広げると、その間に顔を埋めた。そして、晒されていたペニスを口に含んで、ゆっくりと愛撫をはじめる。
トラヴィスは呻いて背中で仰け反った。反射的に足が動いたが、ジェレミーがその自由を奪った。自然に立て膝になって、両手でシーツを掴んだ。
ジェレミーは自信たっぷりに、そして容赦なく、トラヴィスのペニスを吸いあげるように舐めてゆく。
「……ジェレ……ミー……」
「……どうした? お坊ちゃま」
トラヴィスは何事か呟いた。だが聞こえてきたのは、熱い喘ぎだけだった。
「……出していいぞ、トラヴィス」
やがて、ジェレミーは顔をあげて囁いた。トラヴィスのペニスは、弾けそうなほどに膨らんでいる。
トラヴィスは身をよじった。言われなくても、自分のなかの卑猥 な欲情は外へ解放されたがっている。
「……我慢するな」
ジェレミーは片手でペニスに悪戯をした。すぐにトラヴィスが敏感に反応する。
「……駄目……だ……」
「大人しく出せ。変なところで、強情だ」
再び、舌と唇で奉仕をはじめる。
トラヴィスはシーツを強く握りしめた。もう堪え切れなかった。
愛撫されていた先端から、精液が流れ出る。それはジェレミーの口の中を汚し、シーツを濡らした。
トラヴィスは力がぬけたように、ベッドの上に全身を投げ出す。
ジェレミーは自分についた精液を腕でぬぐいながら、上半身を起こした。サイドテーブルにあるティッシュを取り、自分の口を拭いた。さらに数枚取って、トラヴィスのペニスも拭く。随分と濡れていた。
「眠たくなったか?」
トラヴィスは肩で息をつきながら、自分を頭上から覗き込む恋人をじろりと見た。
「……これで寝られたら……ただの阿呆だ」
「そうだな」
ジェレミーは笑って、トラヴィスの横に寝転んだ。
「今夜はこれで終わりだ。怪我人をこれ以上興奮させたくない」
トラヴィスを抱き寄せ、包帯の巻かれた頭を優しく撫でる。
「……お前のせいで、俺のはしばらく突っ立ったままだぜ」
「私のもだ。今、ありったけの理性を総動員して、怪我人を抱かないように頑張っているんだ。この努力を誉めて欲しい」
「お前も変なところで強情だな」
トラヴィスはおかしそうに笑った。
ジェレミーはそのガーゼと絆創膏がトレードマークになった顔に、甘く口づけをする。
「その代わり、明日の朝目が覚めた時に、必ずそばにいる。だから、安心して目を瞑ってくれ」
「ふん、お坊ちゃまは添い寝してくれないと寝られないからな」
トラヴィスは茶化すと、ジェレミーの頬に手を添え、逆に唇を奪う。二人は互いに抱き合い、求め合うようにキスをしあった。
そのうちに、トラヴィスの右手が身体の線を這うように下りていき、猛り立っている恋人のペニスを掴んだ。
「……お坊ちゃまは、添い寝だけじゃ寝られないんだぜ?」
耳元で囁く。
「トラヴィス……」
「俺を抱きたくないのか?」
挑発的に言った。
ジェレミーは鼻先で大胆に誘う恋人の捜査官を、まるで言いつけの聞かない生徒を叱るかのように見つめた。だが、その表情は徐々に不敵に変わってゆく。
「もちろん、抱きたいに決まっている」
声がかすれたのは、トラヴィスの悪戯のせいだ。
「じゃあ、抱けよ……遠慮するな。俺はお前に抱かれたいんだ」
トラヴィスは無邪気に誘惑する。
ジェレミーはゆっくりと口許で笑みを広げた。それが返事だった。
トラヴィスを仰向けにすると、その上に覆いかぶさる。
「……興奮しすぎて、怪我が悪化しても、文句を言うな」
「文句を言われるために来たんだろう?……思い切り悪態をついてやるぜ」
そうして、二人は愉しげに笑いあった。
ともだちにシェアしよう!

