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第四話④

「伝馬の良い所は、気持ちが良いくらいにまっすぐな性格をしていることだよね。けれど、それって少し無謀過ぎるんだ。相手は先生だよ。まっとうな先生だったら、生徒からの告白は受け流して終わるよ」 「そうかな」  伝馬は少しだけ納得がいかないような顔つきになる。圭は理解してもらうように続けざまに言う。 「そうだよ。先生は乱暴なやり方だったけれど、間違ってはいない。一歩間違えたら先生が責められる。僕たちは未成年だから。先生にも立場がある。軽い話じゃないよ」  伝馬の様子を見守りながら、残りのゆで卵を食べ切る。 「……」  伝馬は無言で母親が握ってくれた塩味が効いた白いおにぎりを口に含む。かなりショッキングな言葉を目の前に並べられて言葉もでなかった。  ――でも、圭の言う通りだよな……  この間、一成が一人で廊下を歩いているのが見えて、急いで部活を抜け出して一成に告白したことを謝った。ストレートパンチされた時は痛みと怒りとどうしての三重苦で感情が台風のように大暴れしていたが、勇太と圭に事の次第を話して、ようやく先生に迷惑をかけたんだと思い立った。  ――俺、自分のことしか考えてなかった……  先生に自分を見て欲しくて。  自分をどう思ってくれているのかって。  ――それだけしか頭になかった。  だから謝った。一成は笑って、謝ることじゃないと言ってくれた。優しい表情だった。  伝馬はホッとした。  それで決意した。  ――もう一度副、島先生に告白しよう。  だが面と向かって圭に世間一般の現実というものを指摘されて、せっかくの決意がぺちゃんこになりそうである。  ――俺って馬鹿なのかなあ……  伝馬はうなだれてため息をつく。一口、二口と小鳥が(ついば)むようにおにぎりを食べるが、おにぎりは塩が多すぎるのか塩辛く感じる。もしかして噛んでいるのはご飯ではなく、塩なのかもしれない。 「でも、伝馬は先生が好きなんだろう?」  傍目(はため)にも落ち込んだ伝馬を元気づけるように圭は言葉をかける。 「そうだけれど……どうすればいいんだろう」 「だから、考えるんだ」  伝馬はむくりと顔をあげる。圭は眼鏡の奥で意味ありげに目を光らせている。 「この前も言っただろう? パンチされてお終いにする? って」 「……あ、ああ」  そういえば聞いた覚えがあるようなないような。伝馬は妙に圧を感じて、ちょっとだけ身を引く。 「高校教師が教え子と恋仲になったと世間から犯罪者扱いされない形で、伝馬の想いが伝わるようにするんだ」  圭は容赦のない言い方をすると、唐草模様の風呂敷で空になったお弁当箱を手早く包む。  伝馬は軽く胸元を叩いた。食べたおにぎりがつかえた。

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