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第十話⑪

 ――四組も練習していなかった感じだったな。  今も試合が行われている体育館のコートを眺める。コートは体育館を半分に区切って使用されていて、片方では次の試合が始まっており、もう片方では自分たちと同時刻で開始した試合が、まだ続いている。どうやら白熱しているようで、コート上で大声が飛び交い、コートの外からもそれぞれ熱のこもった声援が飛んでいる。  ――すごいな。俺たちの試合とは大違いだ。  伝馬自身が拍子抜けするほど、自分たちの試合はあっさりと終わった。試合が始まって、水瀬たちバレーボール部員の指示に従って動いていたら、あっという間に勝ちましたという感じだ。相手の四組も自分たちもバレーの練習をしていないのは丸わかりだったが、伝馬が思うに、運動神経の差が勝敗を決したという感じだ。日頃からスポーツをしている生徒と全然していない生徒では、ボールの動きに対する反応速度が見事に違っていた。  ――だから御子柴は運動部員を集めたんだな。  納得して感心した。とりあえずやるかーみたいなスタンスの水瀬だが、案外優勝を目指しているのかもしれない。  そんなことを思いながらチラ見すると、水瀬も同じく視線を伝馬へ投げて、目元で笑った。どうも伝馬の顔にその考えが正直に浮かんでいたようだ。 「俺たちの次の試合までは、まだ時間があるから、それまでいったん解散。集合時間になったら、またここに集まってね」  水瀬の説明では、一学年の第一試合の次は、二学年、三学年の第一試合があり、それが終わって第二試合が開始される。第二試合は勝ち上がった三クラスでくじ引きをして、アタリくじを引いた二クラスが試合をし、勝ったクラスが残ったクラスと決勝戦を行うという仕組みだ。これを学年ごとに行っていく。 「俺たちは、先輩たちの試合の補助に呼ばれているから。またあとでね」  そう言って、バレー部員の二人は舞台ステージへ向かった。ステージには、バレーの試合の受付所が設置されている。  伝馬は空になったペットボトルを握って、どうしようかと考えた。残ったメンバーはここに残って他の試合を観戦するそうなので、伝馬は第二体育館へ行って、勇太と圭の様子を見に行くことにした。 「それじゃ、またな」  そう言い残して体育館を出ていく。入り口付近で司書の七生とすれ違い、なにげなく後を振り返ったら、体育館の隅にいた遼亜がすばやく立ち上がって、七生の方へ向かっていくのが見えた。  へえ、仲がいいんだと意外に感じながら、伝馬は渡り廊下を進む。第一体育館と第二体育館は一本の渡り廊下で繋がっていて、今は運動着姿の生徒や教員が騒がしく行き交っている。伝馬も人の流れを避けながら、自然と早歩きになる。  ――勇太は平気だろうけれど、圭は大丈夫だろうか。  教室での圭の憂鬱そうな表情が脳裏に甦って、少々心配だった。

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