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第6話『朝』

真白な空間で『大きな意識』は、文明レベルは同じ星と言っていた。 広大な宇宙には地球と同じような星があり、ヒトがいて生活していたのだ。それにしても現代日本とさほど変わらない生活様式なのは、地球と似たような発展を遂げたということなのだろうか。 『地球以外にも、知的生命体は絶対いるよな』 そう言っていた会社の先輩の声が耳の奥で蘇り、サキはグッと眉を寄せた。 ずっと好きだった男の先輩だった。 切ない気持ちが湧きそうになる前に、サキは目を開けた。片思いしていた先輩のことは頭の隅においやり、気分を変えるため大きく伸びをした。 サキの部屋には時計がなかった。何時かわからなかったが、カーテンの隙間から朝陽が入っている。 窓を開け、春先の冷えた空気を胸いっぱいに吸った。 薄く青い空を見てから、五階から地上を見下ろす。二階建、三階建ての住宅が並んでおり、自動車が走るエンジン音が聞こえた。 地球ではない星とは信じがたく、新しい街に引っ越して来たような感じだった。 (……会社に行かなくていいなんて、変な感じだな) サキはしばし外の風景を眺めてから動き始めた。 サキの部屋の隣にはレイがいる。物音がしないので、まだ寝ているのだろう。 トイレで用を済まし、洗面所に向かった。洗濯機の横にある引き戸を開け、棚にあるタオルを取る。家の物は気にせず使っていいと言われていた。 顔を洗い、さっぱりすると、まずは自室の片づけから始めた。物の整理をしながら、持ち物を確認する。 備え付けのクローゼットの中には三分の一ほど服が入っていた。ベッドの足元には、ノートパソコンより少し小さめのタブレット端末が無造作に置いてある。 (そういえば、携帯もあったな) 昨夜、ズボンのポケットに携帯端末が入っていることに気がついたのだが、充電が切れているようだった。電源コードを探してみたが見当たらず、ベッドの枕元に置いたままにしている。機械関係はレイに訊こうと思った。 ひと通り部屋を片付けてから、タブレット端末を持ってリビングに向かった。 ダイニングテーブルの椅子に腰掛けようとしたとき、レイが起きてきた。グレーのスウェット姿だ。 「……早いね」 寝起きらしい低い声でレイは言った。 「もしかして、おれの物音で起こした?」 「まあ……。でも、起きる時間だから」 リビングの掛け時計を見ると、七時を過ぎていた。

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