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第20話『欲情』★
ザアザアと流れるシャワーを胸に当てたまま、サキは呆然としていた。足の間から大量の精液が伝って落ちていく。
「う……」
サキは顔を歪めた。
レイがバイトに出るのを見送ってから、急に体が疼き、ひどく性欲を覚えた。自慰で解消しようと部屋に戻った。
一度出せば治まるだろうと思っていたが、それはひどくなるばかりで、下半は昂ったままだった。三度出しても一向に治まる気配がなく、逆に怖くなった。
わけがわからず、サキは自慰をやめ、うずくまって耐えていた。
ふと、こんな姿をレイに見られたくないと思い、部屋に鍵をかけた。
早く治まれと念じながら、我慢できずに時折、射精した。あきらかにおかしな身体になっていたが、調べようにも気力が出ない。服も体もベトベトだった。
どれくらい時間が経っただろうか、ついにレイが帰ってきた。電気を点けることもしないまま、部屋は真っ暗だった。
レイはすぐにサキの異変に気づいた。なぜかはわからない。ドアの外で慌てて、鍵を開けるように言われたが、見られたくなかった。
だが、怒ってドアを叩かれたので、重い体をひきずるようにして仕方なく開けた。
とたん―
レイを前にしたとき、彼から漂ってきた匂いに、激しい衝動が全身を駆け巡った。
この男に抱かれたい。
サキはそう思ってしまったことに驚き、その場にへたり込んだ。なぜだか後孔がべっとりと濡れていた。
レイが自室に立ち去ったとき、抱いてほしい、と強く思った。思えば思うほど、身体の制御がきかなくなっていく。
すぐに戻ってきたレイに抱き上げられたとき、その精悍な身体にひどく欲情した。
だが、本当に抱かれるとは思っておらず、レイにズボンを下ろされたときは、怖気づいた。
抗うこともままならず、楽になりたいと大人しくしたら、レイはサキの身体を貫いた。
男に抱かれるのは初めてだったが、身体が悦んでいることがわかった。
突かれるたびに、もっと、もっと、と危うく口をついて出そうになるのを必死で堪えた。
レイがサキの中で達すると、あれだけ激しかった性欲も不思議と治まっていった。
大きく息を吐いたレイは、余韻を味わうこともなく、ベッドから下りた。サキはひどく寂しい気持ちになり、離れていった身体を目で追った。
「動けるようになったら、リビングに来て」
レイは背を向けたまま、言った。
「その身体のこと、教えるから」
レイはシャワーを浴びにいったようだ。浴室の閉まる音がした。サキはまだ熱がわずかに残っていて、すぐには動けなかった。シーツも身体もぐちゃぐちゃだった。
ベッドに沈み込んでいると、レイが浴室からリビングに向かう足音が聞こえた。起き上がり、サキもシャワーを浴びにいった。
身体に残ったレイの残滓を洗い流していると、泣きたくなった。
レイはリビングに来いと言った。だが、どんな顔をすればいいのかわからない。行くのが怖かった。
胸にシャワーを押し当てたまま、立ち尽くしていた。しばらくそうしていたあと、サキはぎゅっと奥歯を噛んだ。
(でも、ちゃんと教わらないと)
サキはシャワーを止め、濡れた髪をかき上げた。
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