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第51話『違う抱き方』★

秋も深まった晴天の下、サキは白河紙書店に向かっていた。午後の講義が終わり、その足で電車に乗った。   今日はバイトの日ではない。昨日レイを連れてバイト先に行き、ヒートを起こした。 店主の白河さんはオメガということもあり、サキの体調の変化には柔軟に対応してくれていた。   ユタカに家まで送ってもらったあと、廊下に散らばった栄養剤を見て、レイは疑り深く言った。 「ほんとにユタカさんに何もされてない?」 「うん。何度も言ったろ、つまずいただけだって」   サキが答えると、レイは黙々と栄養剤を拾った。 その姿を見ながら、サキの胸はトクトクと早鐘を打っていた。 (レイが怒った)   サキから引きはがすようにユタカを力づくで外に連れ出した。 誤解だったとはいえ、サキを守ろうとしてくれた。その怒った横顔に胸が高鳴った。   レイが自室に入ると、サキの身体が急に熱を帯び始めた。 そばにいないのに、レイの匂いを強く感じ、身体が待ちきれなくなっていくのがわかる。 サキはよろめきながら、自分の部屋に入った。   ベッドに上がってレイが来るのを待っていると、期待通りレイがやってきた。   レイはサキの肩を軽く押して倒すと、上衣を脱いだ。逞しい身体を見て、サキの胸が大きく鳴った。 (服……!) レイは今まで服を脱いだことがなかった。 いや、一度だけある。それは由井浜での夜だ。 レイが薬によって発情したときは、お互い服を脱いで肌を合わせたが、サキのヒートを鎮めるとき、レイはいつも服を着たままだった。   由井浜のホテルで激しく抱かれた夜を思い出し、サキは全身が熱くなった。   レイはサキの上衣を捲り、身体を撫で始めた。 いつもはしない愛撫にサキは戸惑いつつも、快感は走る。素肌に唇を押しあて、舌が這っていく。 敏感になっている乳首に触れられたとき、サキは小さくのけ反った。 「……んッ……」   同時にサキの身体が急激に熱を伴い、完全にヒートを起こした。後孔が濡れる。 心臓が脈打ち、身体が目の前のアルファが欲しいと叫び出した。 下半身がうずき、たまらなくなって、サキは声を絞り出した。 「レイ、そういうの、いいから……」   このままだと由井浜の夜のように、愛し合うように抱かれたくなって、自分が何を言い出すかわからなかった。 これ以上、官能を刺激されたくない。サキはぎゅっとシーツを掴んだ。 そうしなければ、レイに抱き着いて、ねだってしまいそうだった。 この行為は『処置』なのだ。心を通わせるような深い交わりをしてはいけないと、頭の片隅で警鐘が鳴った。 「は、はやく、終わらせて」   サキが小さく言うと、レイは手を止めて、身体を起こした。 熱い瞳でじっと見下ろされ、サキは思わず顔を背けた。   レイはサキのズボンを剥ぎ取ると、屹立したサキの半身をしごいた。 「や……あっ!」   サキは我慢できず、すぐに果てた。気持ち良過ぎて涙目になる。 レイはサキの身体を開き、蜜で濡れた孔に自身の熱を押しあてた。 ゆっくりと挿入し、身体を揺すられ、サキはあられのない声を零しながら、サキは思った。 (いつもと違う)   レイから処置を受けるときは、大抵、一気に押し込まれ、その後レイは自身が達するために機械的に動くのだ。だが、今日は違う。 ねじ込むように押し入ってきたあと、緩急をつけて動かれた。サキの快感を呼ぶように奥を突かれた。 「……ああッ!」   白濁が飛び、サキは達してしまった。 レイの半身はサキの中に入ったまま、まだ熱をもったままでいる。 レイの熱い塊を意識したとき、サキの下半身は再び屹立した。 ヒートのときはいくら吐き出しても性欲は治まらない。アルファの精液が必要なのだ。 レイはまたゆっくり動きだした。 「……んう、レ、レイ……!」   レイはサキの身体を揺すり続けている。 まるでサキがよがるのを楽しんでいるかのようだった。ギシギシとベッドの軋む音が聞こえた。 「た、たのむから、早くして……」   サキはぎゅっと目をつぶり、奥歯を噛んだ。 片腕で顔を隠すと、レイは一旦動きを止め、それから自身が達するために腰を動かし始めた。

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