25 / 48
祝え!和真の誕生日!①
オレは、ゴールデンウイークというものが嫌いだった。
周りのヤツらは浮き足立ってうるさいし、あちらこちらから来る誘いを調整すんのも面倒だし、どこに行っても人が多いし、それ以上にいちばん嫌なことがあったが……今年からはなくなった!
5月3日にやってくる和真の誕生日を堂々と祝えるからなぁ!!
今までずっと和真の誕生日を祝いたかった。いちばんにおめでとうを言いたかったし、プレゼントだって当日渡したかった。でも学校休みで和真に会えない。ただの友達だったから予定もないのに当日に押しかけたりできないし、あんま高いもの買っても変に思われそうだから菓子(和真の好物を選んだ)を休み明けに渡すぐらいしかできなくて、とにかく、オレは和真の誕生日を当日にしっかり祝ったことがない。
でもそんな不満には今年でおさらば。休みが長い分祝い放題だ。土日とくっついて5日間もある。毎日セックスして、どっか近場にプチ旅行とか行ってもいいな。そんで旅行先でもセックスして、いっぱいイかせてやって……ゴールデンウイーク最高だ!
計画を練りながら休みを心待ちにしていた、4月末。
大晴の隣に座り講義が始まるのを待っていると、颯太がやってきてオレの隣に荷物を置いた。
「ゴールデンウイークどっか行かね? 空いてる日ある?」
「和真と過ごすから空いてねぇ」
「鎌倉とか伊豆とか~あ、でも璃央と大晴の地元も行ってみてぇ!」
「俺らの地元なんもないよ」
「だから、空いてねぇって!」
せっかく休みで和真と会えるんだから、和真以外に時間を使いたくない。
「というか璃央って毎年ゴールデンウイーク乗り気じゃないよな?」
「だっけ?」
「中学のときからだからな、もう覚えた」
「ふっ……それは去年までの話だ。今年からは、和真の誕生日を祝えるんだよ!」
ふふん、と胸を張って見せると、颯太も大晴もぽかんとしていた。
「え、そマ?」
「まさか学校休みで木山の誕生日祝えないから、機嫌悪かったのか?」
「そりゃそうだろ。好きなやつに誕生日当日会えなくて祝えないとか地獄だろ」
ふたりはそれぞれ何かを思い浮かべて、確かに、と納得して頷いた。
「推しの誕生日にログインできなかったみたいな感じか。キッツいな」
「去年飼い猫の誕生日祝えなかったのつらかったな……あ、沙羽ちゃんの誕生日っていつ!?」
「えっと……まだ先だったと思うから大丈夫!」
「ちゃんと正確な数字を教えてくれ」
「とにかく、オレは忙しい」
デートプランを練るためスマホに目を移したが、颯太はまだ諦めずにオレの肩を揺さぶってくる。
「まあまあ、1日ぐらい俺らと遊んでくれていいじゃん! 木山くんも一緒でさぁ。つか、木山くんの予定は空いてんの?」
「……」
3日は予定空けててくれてた。オレが誕生日祝いたいことを察してくれてる。んでヤる流れになるのも和真なら察している。だから4日もオレと過ごすのは決定だ。でもそれ以降は……聞いてない。和真の誕生日祝えるからって舞い上がって聞きそびれてた。オレは和真以外に予定入れてないけど、和真だって友達と遊んだり、もしかしたら一条鷹夜と会ったりとか……
「うわ――――っ!」
「璃央は木山関連になると喜怒哀楽激しいな」
「ま、おおかた予想はできるけど……あ、そうだ大晴、俺ゴールデンウィークにあるアニメイベント行くんだけど、来る? 沙羽がそこのコスイべ出るらしいんだけど」
「絶対行く」
考えていたセックス(デート)プランが崩れていく予感に頭をぐしゃぐしゃ搔きまわす中、颯太と大晴は固く手を取り合っていた……
その日の夜、和真に電話をかけた。
「和真!」
『うわっ、どうした?』
2日に1回ぐらい我慢できなくて電話してるけど、やっぱり和真の声は落ち着く。
「和真、ゴールデンウイークの予定ってどうなってる?」
『あー……えっと……』
ダメか、ダメなのか……
『7日の日曜だけ友達と予定入ってるけど、それ以外は空いてるよ』
「!!」
『璃央からは3日以外聞かれなかったけど、たぶん休みの間はこっちにいるんだろうなって思ったから』
小さく、『一応予定入れなかった』と付け足された。嬉しさで心臓がバクバクして、一気に体温が上がった。
「オレのために……」
『あ、う、うん』
「和真……好き……」
好き、好き、好き。何回言っても足りない。
「やっぱ2日の夜帰る。日付け変わった瞬間、いちばんに和真におめでとうって言う!」
『わかったわかった、そう言いそうだなって思ってたし』
「待ってろよ。めちゃくちゃ気持ちよくしてやっからな」
煽るように囁いてみたら、変な奇声とともに何かが倒れる音がした。机に積んでた漫画でも倒したんだろう。
オレのゴールデンウイークは1日減ったが、4日間かけて和真と楽しむぞ!
*
「かずまぁ!」
駅の改札出たところで待っててくれた和真に飛びつく。毎回迎えに来て待っててくれて嬉しい。人がいるから!ってやり取りをするのだが、夜遅めの電車だからか改札を出てくる人はあまりいなくて、控えめに抱きしめ返してくれた。
「夜なのに元気だなあ」
「和真に会ったからだ。和真といる時がいちばんテンション高えから」
他の人と喋る時はそんなテンション上がんねえ。和真だけだ。
「んで、もうラブホ行く? 飯食べに行く?」
「夜飯食べてないからどっか行きたい。璃央のオススメの店とかある?」
「おう、和真と行きたいところはマップにピンつけてるからな。酒とか飲む?」
「璃央がいるから飲もうかな」
微笑んだ和真はオレのスマホを覗き込む。笑顔を見ただけで胸がギュッとなって、オレを苦しませる。
和真は酒にすぐ酔うし、酔うと無防備になるからオレのいないところや家以外で飲むな、特に友達とはダメだ!って言ってある。まあ、酒に酔ったのが原因でオレにホテル連れ込まれたわけだしな。
「んじゃあ、普段和真が行かない賑やかめな居酒屋に連れてってやろう」
「お願いします」
和真と一緒にうまい居酒屋で飲んで食べて過ごす夜……最高だ。最高のゴールデンウィークの出だしだ!
そしてほろ酔いになった和真に肩を貸しながら、ラブホの部屋に到着した。
中学生の頃、3日に部活で学校に来たら同じく部活で来てた和真と鉢合わせて、内心ドキドキしながら「あ、お前今日誕生日だったよな、おめ」って顔見て今思い出しましたよ感を漂わせながら当日に言えた!って舞い上がってたオレに自慢してやりてぇ。
オレは和真と恋人になって、日付が変わった瞬間におめでとうを言ってセックスができるようになったってな!
……中学生にセックスという単語はまずいか……
まあとにかく、0時が来るまで約2時間……どう過ごすかな……今からヤると和真が寝るかも……それか夢中になっていつの間にか0時を過ぎるかも。
和真はシャワーを浴びようと、服を脱ぎ始めた。とりあえずオレも浴びるか。上着とTシャツを脱ぐと、和真の視線がこっちに向かう。
「璃央、先入る?」
「お前と一緒に入る。綺麗にしてやる」
「手つきがいやらしいな……」
ともだちにシェアしよう!