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愛しているのに……①
理人さんとの肉体だけの関係が続いて半年が経った師走。毎週末の仕事終わりに落ち合ってはそのままホテルへ直行するのが当たり前になっていた。そこで恋人のように食事をして、たまに休みの日は出かけて……なんてことはなく、ただ単純に本当に欲を満たすだけの関係。
最中も最初こそはたどたどしかった徹史も回数を重ねる度に、彼が悦ぶポイントを見つけて責めてあげるのが得意になっていた。
理人さんは激しく甚振られるのが好きなのか「もっと………」と強請ってくるのが、何か彼の中の心の錆を取り払ってほしいと切願しているように感じて、この人を救いたいと思うのに彼の思うままに応えることくらいしかできない自分にもどかしさを感じていた。
今日だって、背中にしっかりとしがみ付いて、達していたのに事後は最中の甘えが嘘だったかのように余韻もなく早々にシャワーを浴びに行ってしまう。
一度だけ事後に理人さんの後を追ってシャワー室まで一緒に入ったことがあったが、彼の綺麗な背中を見ていると堪らず触れたくなってしまい、そのまま流れでシてしまった。
それが彼には凄く不快だったのか、それ以来シャワーに入ってくるのは出禁になった。徹史はベッドで行為の余韻に浸りながらも、シャワーの音が止むのを枕に顔を埋めて待つ。
暫くして水音が止み、シャワー室から理人さんが出てきた。前髪を梳きあげて、下はスーツのズボンに気持ち程度にワイシャツを羽織ったすがたでソファに座る。
この一週間、待ちに待っていた数時間のひとときが終わりを告げることに寂しさが増す。
「お前もシャワー浴びてこい。出るぞ」
徹史が執拗以上に求めた時以外は泊まりなんてしないし、長時間だらだらいるのは割り切った関係である以上必要ないと嫌がる。
栗山は、のそりと上体を起こすと彼の横顔をじっと眺めていた。今日は理人さんと会う前から決意していたことがあった。それは彼を食事に誘うことだった。
決行日は十二月二十五日……ではなくて、その翌日の金曜。理人さんの為に三カ月待ちだという三ツ星レストランを予約した。すべては理人さんとゆっくり時間を過ごしたいという徹史の切なる願いのために。
デパートの催事の責任者だと聞いていた彼がクリスマスという一大イベントの日が空いている訳が無いことは考えずとも予想できる。それに、あからさまにクリスマスにしたら変に勘ぐられてしまいそうなので敢えてズラした日程にした。
理人さんの利害に反する行為だと分かっていても、好きな人に尽くしたくて堪らなかった。割り切ったフリを続けてきたこの半年のせめてものご褒美にしたかった。
成功する可能性の方が低いけど、一か八かで誘えることができるのならば……。
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