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第2話

「おい起きろマヌケ」 バシッと頬を叩かれた衝撃で目が覚めた。グラグラ揺れる視界で気持ちが悪い。俺どうなったんだっけ、死んだんだっけ。 どうやら手錠をかけられ椅子に座らされているらしい。自分の状況が段々とわかってきた。見上げれば、二人のスーツ姿の人間が立っている。ショートカットの髪に吊り目の勝気な表情の女。隣には眩いプラチナブロンドを結えた中世的な顔立ちの多分男だろうか、随分若い。 「……踏んだり蹴ったりだなほんと」 「許可なく口を開くな。小汚い悪党が、立場をわきまえろ」 俺を殴ったであろう女がピシャリと言い放つ。 「ええ怖い……」 「アルバート・ブラック。23歳の若さでラッズファミリーの幹部に成り上がった男……、こんな軟弱で頭の弱そうなやつだったなんてな。正直期待はずれだ」 「ですが上層部はこの男しか捕まえれなかった……申し訳ありませんミカエル様」 「かまわない、すぐに捕まえる。聞け、アルバート・ブラック。お前に残された選択肢は既にない」 ミカエルと呼ばれた男が俺の目の前にずいっと三本の指を出し、詰め寄る。 「一つ、命令に従う。二つ、自害しない。三つ、マフィア組織の壊滅を手伝うために協力を惜しまない。どれか破ったら即首に縄かけて殺す。わかったな」 不思議な虹彩を宿した目が、冷たく俺を見下ろす。 「権力で殴ってくるタイプ??……どうせファミリーに戻っても殺されるだけだし、それはいいけど」 俺にも多少は譲れないものがある。 「その代わり、衣食住補償してくんない?ふかふかのベッドで寝たいし、こんなだっさい囚人服も着替えたい。」 あっけらかんと言い放つアルバートに、二人の冷ややかな視線が突き刺さる。 どうやら俺の第二の人生、ますます波乱に満ちてるみたい。 それから俺は一通り身なりを整えることを許された。ファミリーにいた時はほとんどスーツだったが、今はシンプルなズボンの白いカッターシャツ。アクセサリー類は没収されたままだ。その代わり薄い金属製の首飾りを強制的につけさせられた。 女は席を外したらしい。部屋には俺とあの美少年だけになった。 俺は再び椅子に座った。刑務所ではめちゃくちゃ歩かされて足疲れたし。 先に口を開いたのはミカエルと呼ばれていた男だった。 「一応、逃走防止用にお前には小型爆弾をつけておく。俺から決められた距離を離れたら即座に首吹っ飛ばす」 その言葉に背筋に悪寒が走る。やることなすこと徹底的すぎる。 「お前らって何者?俺のファミリーどうなったの?」 「お前二日酔いするまで酒飲んで記憶飛ばしてんのか?本当に幹部かお前」 「一応幹部だけど。だって俺のファミリーは血縁者しか幹部にはなれねぇし」 ラッズファミリーは国内有数の犯罪組織だ。その上層部は血縁者で固められ、公に出てくることは滅多にない。 「兄貴達と違って俺は異国の母親を持った私生児だから、ラッズの名前はもらえないし、金髪金目でもない。幹部に上がれたのは奇跡みたいなもんだ」 母親は遠く東の国から流れ着いた一族の末裔だったらしい。自分の黒髪は母親譲りで、金色の目だけがラッズの証っていうわけになる。 「ああ、なるほどな……」 「んで、お前らは?」 「俺たちは国家機密警だ。お前らみたいな反体制分子やスパイなどをふんじばって首に縄をかける。今回俺はラッズファミリーの一網打尽を任されたが、重要な幹部達にはあと一歩のところで逃げられた」 「あーなるほどね。んで俺をダシに捕まえようと思った?」 「お前ごときを取り返しにくるとはハナっから思ってない。当分ラッズは動けない状態だろうし、他の組織を叩く。だからせっせと働け、駄犬」 「せめて名前で呼んでくれると嬉しいなー…なんて、えへ」 「きもしね」

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