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第3話 鍵と鍵穴 3
ダッシュボードに背中を預けた蒼は、助手席のシートに腰を下ろして、足を後部座席に向かって伸ばしている。
俺はその膝の間に座り込んで、口の中に蒼を感じていた。
たくさん唾液を溜めて、ゆるく開いた唇から重力に任せて蒼へと送る。そのまま頭を下ろして、二人の距離をゆっくりゆっくり縮めていった。
ぐぷっと音を立てながら喉奥まで優しく迎え入れ、辿り着いてからは、奥の方だけゆるく締め付けた。
そうやって僅かな刺激を与えるだけで、堪らなくなったのか、蒼はビクビクと小さく跳ねていた。
「ちょっ……翠。そんな余裕ある時じゃないだろ。そういうの、あとでしてくれたらいいから、今はやめ……あっ! ちょっと! ……ん、ん、んっ!」
キレイな顔に、キレイな汗が光って流れ落ちてきた。
いつの間にか目を開けられるようになっていた俺は、その美しい汗の滴の運動を眺めながら、柔らかく伸ばした舌を熱く大きくなった蒼のに添えた。
このキレイな顔が、眉間に皺を寄せてるカオが見たい……。
俺はそのまま頭を上下に振った。
ゆっくり、丁寧に、でも舌を回して熱のまわりに絡ませたり、裏側を摩ったりしながら触れ合わせていた。
その時にはもう肌の痛みは消えて、耳には口から聞こえるじゅぶじゅぶという空気と水分の混ざり合う音しか聞こえなくなっていた。
匂いは余計なものは感じ取らなくなり、好きなモノだけが鼻腔をどんどん占めて増えていく。
息を吸うだけで満たされて、涙が零れた。
蒼の足の柔らかい部分に手を乗せて、時々ススッと肌を滑らせた。その小さな刺激が、口の刺激と合わさると、蒼の顔が小さく歪んだ。
その顔を見ていると、目からの刺激も全てが愛撫に感じられる。目に映るものが全て気持ちいいものへと変えられていった。
「ン……はむ……あんンっ」
不快な刺激に支配されていたカラダが、段々と気持ちよさに占められる。そうなると、今度はギアが変わったように、二人でひたすらに気持ちよさを共有するようになる。
猛スピードで、お互いにお互いの気持ちよさを感じ取って、更に気持ちよくなるという相乗効果に溺れていく。その波にのまれるのは、少し怖いくらいだ。
蒼がヨければ、俺もヨくなる。それを共感した蒼はさらにヨくなる。
小さな階段を登っていた足が、2段、3段ととばして駆け上がっていくみたいに、どんどん登っていく。
口の中でグッと蒼が存在感を増すのがわかった。それを舌で感じ取ると、俺のナカがぎゅうううッとしまって切なくなった。
「あっ……あっ、あああ、はああンっ……そぉっ!ヤッバイ……なんか……や、ばっ……イッ!!!」
「すぃっ……あ、あ、ぐっ……ん!!!」
俺が限界になって思わず口を離した途端、蒼が俺の頭を手で掴んだ。そして、そのまま腰を持ち上げると、一気に口の中に白を注いでくれた。
「はぁっ、んっ、んっ、っくっぅ……ン……」
俺はコクンとその全てを飲み干した。すると、体の内側から、ふわふわとあたたかい光が満ちるような温もりを感じた。
ガイドのケアが成功した時に、このふわふわは現れる。これが最高に気持ちよくて幸せなんだ。
外の殺人事件現場で冷え切って、ぶっ倒れる寸前だった俺は、すっかり満たされて蕩けきっていた。
パタリと蒼の逞しい腹筋の上に倒れ込むと、少しだけ残った興奮の後を舐めとった。
「うっ! ちょ、ちょっと待って翠。俺今ので結構力持ってかれたかも……疲労がすごい……」
「ん? じゃあ、もう今日はこれで終わりにするか?」
センチネルはケアが成功すればすぐに回復する。ただ、ガイドは自分の力で回復しないといけない。
だから、蒼が無理になったら、そこで終わり。
俺はまっすぐ勃ち上がっているのを見られないようにしながら、蒼の服を直し、そっと唇を合わせた。
軽いリップ音をさせて自分の耳を甘やかし、じっと蒼を見つめた。
「とりあえず、戻ろうぜ。俺もう歩けるよ」
青白い顔になった蒼は、俺を見てにっこりと微笑むと、軽く抱きしめてキスを返してきた。
「良かった、ケアできて。戻ったらもっといい時間過ごそう」
そう言って俺の手を取った。
二人で車を降りて、エレベーターへ向かう。
ペントハウスまで直行。
指を絡めて手を繋ぐと、長く甘いキスを交わした。
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