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第32話
身体が熱くて腹の奥が疼いてたまらない。息を乱しながら目を開くとあたりは暗くなっていた。口の中が妙にべとつくのが気持ち悪くて、近くにあったペットボトルを掴みとり、煽り水を飲む。ふ、ふ、と短い呼吸を繰り返す身体を抱きしめてさする。身を丸めると、目の前で形を変えていく自分の中心が目に入る。どくん、と血が大きく巡ると頭がガンガンと痛み、何も考えられなくなる。ちゃり、と鎖が鳴り、天井を見つめるそれに手を伸ばす。ぴり、と痛みが走る。長いこと発情状態にあり、自分や彼らによって弄り回された陰茎は擦りすぎて赤みを持ちひりついている。それも構わず上下に擦り上げる。朦朧とする頭はその痛みを快感だと勘違いしているようだった。カウパーの滑りを使い、乱雑に手を振り乱すが、勃起したままのそれは精を放つことが出来ない。
出したい……
後ろからたらたらと愛液が溢れている。
ここに、欲しい……
片手で陰茎を擦りながら、もう片手を後ろに伸ばそうとした時に、遠くにある部屋のドアが開いた。食事のトレーを持った陽介が入ってきた。
「よぉすけぇ……」
霰もない僕の姿に陽介は一瞬目を見開いたあと、にっこりと微笑んだ。ゆっくりと足を進め僕の元に近づいてくる。
「よぉすけぇ…イキたい…イけないのぉ…よぉすけぇ…」
腹の奥が蠢き、腰が勝手に揺れる。近くの足の長いテーブルにトレーを置き、ベットの前に立つ。微笑みながら、じっとりと僕を見つめる陽介のもとに身体を起こし、スラックス越しに彼のアルファに触る。ベルトを引き抜き、チャックを下ろし下着から取り出す。まだ芯を持たないそれを握り、やわやわと揉んだり上下に擦る。
「よぉすけぇ…これ、ほしい…ほしいよ…」
顔を近づけると、む、と雄の匂いがして、内股を愛液がなぞる。ちゅ、とキスをしてから口内にそれを頬張る。唾液をしっかりと絡めて強く吸い付いてじゅるじゅると音を立てながら頭を振る。舌を硬くして、裏筋をなぞり、窪みをくすぐる。
「ななぁ…」
名前を呼ばれ目線をあげると、頬を染めて息を荒げながら微笑む陽介がいて、ぶわ、とアルファのフェロモンが強烈に放たれる。陽介は僕の左頬を優しく撫でながら、腰を動かし右頬裏に大きさを増してきたそれの頭を擦り付けてきた。
あなたが撫でる頬は数ヶ月前に初めて叩かれた。あなたが欲を押し付ける頬はあなたの姿に乱され打ちつけた。
陽介が両手で僕の頬を捕まえると、腰を揺らし出す。必死に歯を立てないように気をつける。陽介は嬉しそうに喉奥までアルファを突き立ててきてえづいてしまうのを呑み込むように喉を動かす。
「あぁ…っ、なな、気持ちいいよ…」
ぬぽ、と唇と糸をひき硬くなったペニスが抜かれ、溢れた唾液とカウパーの混ざった雫を手の甲で拭い啜る。もうさっき考えたことなど忘れてしまった。僕は頬を緩ませて、ベットに倒れ込み、両膝を抱える。陽介にひくつく孔が見えるように足を開き、彼を呼ぶ。
「よぉすけぇ…はやく、はやくぅ…」
「はいはい、ななはえっちだなぁ」
ベットがやや沈むと彼が僕の上にのしかかってきた。陽介の柔らかく明るい声なのに情欲のこもった熱が孕んでいて奥がより疼く。唇をぺろりと舐められる。両腕を首に回して引き寄せて口を大きく開き陽介の唇を覆い舌を差し込む。先端の一番敏感なところを硬くした陽介の舌がちろちろと弾く。
「んぁあっ、ん、んぅっ」
たら、と落とされた唾液を啜り飲み込む。耳の奥がぼぅ、と低く響きうなじが痺れる。肩がすくみ、駆け抜ける電流に陰茎はふるふると泣いている。
「してぇ、はやく、して、よぉすけ…」
腰をゆらめかせ、彼の腹筋に先端が当たる。ぐりぐりと先端が陽介の腹筋の筋をたどり、ぬと、と透明な液が滑る。
「あんっあっ、あぁ…」
その先端の滑りの気持ちよさに、勝手に腰がかくかくと動いてしまう。気持ちよさに顔を横に倒し、指を舐め吸う。でも、足りなくて、射精までたどり着けない。瞼を持ち上げて陽介の顔を横目で見やると、口角を上げながら被虐的に吐息と共に笑った。
「俺でオナニーするなんて、いつからななはそんなに淫乱になったの?」
「ちがぁ…ん、あっ、あぁ…とまらな、あっあんぅ…」
顔を隠そうとする手を陽介は掴み、引き寄せシーツに張り付かせた。腰を浮かせ、より腰の動きは早くなる。だが、まだ足りない。
「イケない…イケないよぉ、よすけぇ、イキたいぃ…」
手で陽介の肉棒を孔に導きたいのに、熱い手のひらで縫い付けられ自由が効かない。焦れったらしくて、足をばたつかせ寝たまま地団駄を踏む。
「イキたいぃっ、いれて、よぉすけのちんちん、いれてよぉっ」
ばふばふとマットレスを踏む僕は涙で滲む視界の中でねっとりと陽介の視線に舐られているのがわかっていた。でももう身体は直接的な刺激を待っているのだ。陽介の腰に足を巻きつけて、孔でその滾る中心にキスをする。首を伸ばして陽介の唇にキスをしようとしたが、少しだけ距離を取られてしまい触れられない。それにも唇を噛んで、熱い吐息を漏らす。
「よぉすけの、熱いおちんちんで、奥までついてぇ…いっぱい、せぇし飲ませてぇ…」
ぺろぺろと唇を舐める。柔らかい唇が、舌先を食むと、ぞくぞくと背筋に電気が走り肌が粟立つ。舌を柔く噛みながら陽介は優しい顔つきで瞳は肉食のケモノのような恐ろしさをぎらつかせながら吐き捨てた。
「淫乱ななちゃん」
そして指四本をヘソ下の腹部に当てがう。くすぐるように撫でてから、く、と力を入れて押し込まれる。
「ここに何欲しいの?」
くく、と力が加わると、皮膚を隔ててそこにはオメガが隠されていることに気付いてしまう。きゅきゅぅ、とナカできつく締まってしまう。
「ひゃあ、あっ、よ、すけの、ち、ちんっ」
「それだけ?」
奥の奥を揺らすように指先を強く押し付けたまま、小刻みに震えるように揺さぶられる。まるで携帯の低いバイブレーションのように骨まで響き、ぞぞぞ、と全身を快感が這っていく。
「あっあぁっ、あっ…」
「ほら、言ってくれないと俺、わかんないよ?」
なぁな、と甘く囁く声色と表情に比べてあまりにも暴力的な性技に僕は全身を痺れさせる。頭が真っ白になり喘ぐことしか出来ない僕の目を覚ますように、臀部をぱちん、と叩かれた。痛みはないが大きい音に驚いてしまう。
「せぇし、よぉすけの、せぇしが、ほしいっんぅっ」
「どんなの?」
「あ、つくて、どろどろで、あふれちゃうほど、ぁっん…たくさんのっ、あまいよぉすけの、せぇしぃ…!」
ちゅ、と唇を重ねて、陽介は満面の笑みを見せて、褒めるように腹部を撫でる。優しい手つきに、ほ、と息をついた瞬間、一気に奥まで割り込まれる。身体が真っ二つに裂かれてしまったかのような勢いのよい力強さに、目を見開いて爪先を突っぱね、身体中にびりびりと強い電流がのたうち回る。
「かっはぁ……ぁっあっ…っ…」
また頭が真っ白になって快感に支配されていると、ぺちんと大きい音がして、臀部が少しだけ熱い。
「淫乱のななちゃんがおねだりした本番は、これからだよ?トバさないで、ねっ」
手のひらで体重をかけるように強くヘソ下を押さえ込まれ、つい息を止めるが、すぐに大きく腰をスイングされて叫声が部屋に響く。あまりにも凶暴な律動に僕は恐怖を抱く。
「ほら、ここ、っ、ななのっ、子宮、んっ、降りてきたよっ、んっ」
空いている手で胸を揉みしだくと、次は、腰の動きのような容赦ない速さで尖りを人差し指で弾く。
「ひぁああっ!らめっらめっ!おっぱい、いっしょは、ああっ!らめ、なのお、おっ、あんっあんっあんっ」
胸を隠すように横に倒れ込むと、身体を反転させられて羽交い締めにされる。身動きのとれない体勢に不安が募るも同時に期待が勝り、孔はぎゅうぎゅうとノットの膨らんだ陽介を締め付ける。ベットに寝そべっていたのを、力任せに起こされ膝立ちになると、凶悪なペニスが、ごりゅ、とさらに奥をついたのがわかってしまった。
「ほら、淫乱ななちゃんの子宮に入る俺のちんちん、お腹の上からでもわかるでしょ?」
耳元で吐息と共に吹き込まれ、身体を震わせてから目線を下げると、なんだかヘソの下が盛り上がっているような気がする。きゅんきゅんとそこが疼いてしまう。
「わかんなぁ、っ、あぁ、あっ…」
「嘘つき。さっきから、ななのえっちなおまんこ、きゅんきゅんしてるよ?」
直接な卑猥な言葉に、汗が噴き出る。身体が一気に弛緩しペニスからは何も出ないが絶頂を迎えたのを感じた。それを見逃さないように、陽介は羽交い締めにしたまま激しく腰を小刻みに振り犯す。
「ひゃああっあああっああっらめええっおかしく、ああっ、おかしく、なるからああっひああっああっ」
絶頂の中にいるのに精は放たれない。おまけに、さらに追い立てられ身体は痙攣しているのか陽介の激しい律動なのかわからないほど乱れた。項垂れると律動に合わせて前髪と僕のペニスがぶるんぶるん弾けているのが目に入る。陽介は射精しながらもそのピストンを緩めることはなく、一体何が起きているのか頭が処理できずに目の前が真っ暗になった。
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