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第11話 後日談
「キス? キスだけなの?」
「そうだけど?」
俺は翌日、「……で?」とにやにやしながら聞いてくるゆいちゃんに、事の次第を白状させられていた。
「ふーん……濡れた床で、指を絡めて押し倒されてキスね……。まあ、悪くないわよね」
「だろ」
何か悪いか。俺はそれだけでも十分よかったんだぞ。
本当にヨかった。キスだけでいっちゃうくらいよかったんだ。
御剣さんだってそうだったと思いたい。だって俺たちどっちも固くなったのが互いに当たって……ちょっとだけ御剣さんが俺の身体を服の上から撫でて……。
それでもその先はしなかった。まだ営業時間だしいつお客さんが来るか分からないし。急いで続きをするのもどうかな、という感じだった。
フルーツミルク飲料を飲みながら俺たちは語り合っている。
あの後御剣さんが帰ってしまい、俺はいつも通りの生活に戻った。でも御剣さんは言った。また今度の週末、来るって。車を二時間くらい飛ばして。
いやー参ったな。これって相思相愛ってことでいいのかな。御剣さん本気ってこと?
御剣さんが彼氏ってことでいいのかな。
今度はっきり聞いてみなくっちゃ……。
俺は以前この里を仙人の住んでるみたいって思ったけど、今はそう感じない。ここは俺が暮らす場所で地に足が着いた場所だ。
俺んちのこの温泉がもっとよくお客さんに喜んでもらえたらいいいな。御剣さんがそう思ってくれたように。
それで御剣さんが来てくれればもっと。
まだ夏のうちにもう一度俺のところに会いに来て。
お湯を湯気よりも熱く沸かして、待ってる。
<湯気よりも熱く沸かして・おしまい>
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