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殺戮の歌6

 橋を破壊し、警察暑、消防署を制圧、次にオレ達が狙ったのはこの街のメインストリートだった。  歓楽街と、ショッピングモール。  また夜ではないから、昼間の歓楽街の方はそれ程人はいなかったが、まあいい。  初めは小さな爆発を起こす。  人は死なないが恐怖を与えるには十分な程度の。  パニックを起こした人間達の前に銃を構えたオレ達が立つわけだ。  人間の中の何人かがいう。  「抵抗したらダメだ、言うことさえきけばきっと撃たれない!!」  それは俺達が仕込んだサクラだ。  金を払い、俺たちの命令に従っている。 金はやった。  残りの金も振り込んだ。  でもコイツらも殺すけど、本人達はまだそれは知らない。  その声で人間達はあっけないほど逃走や抵抗をやめる。  「それが理性的なこと」におもえるからだ。  バカだなぁ。  本当にバカだ。  相手が常に、自分達を尊重してくれると思っているのだ。  平和ボケしたバカだから。  オレ達は知ってるぜ?  人間は相手なんか尊重しない。  自分のやりたいことを相手にするだけだって。  なのにオレ達がなんでそうしてくれると思うんだ?  だが今はオレ達は人間達の望む態度をとろう。  「我々はおまえ達を傷つけることなどない。しばらくおとなしくしてほしいだけた」   オレ達はそう言って誘導する。  歓楽街のパチンコ屋の中に。  ショッピングモールの映画館のシアターの中に。  人間達を押し込める。  逃げられないように閉じ込める。  爆弾を仕掛ける。  逃げ出したなら爆発することを告げて。  その後はもう、放置だ。  人間達はおとなしくしているだろうから。  カメラを仕掛けて後は遠隔操作だけでいい。  周囲の小学校や中学校にも急襲をかける。  ここは、橋の爆破の連絡を受けて、自分たちから体育館に籠もって避難していてくれたので、爆弾のセットと「ここから外に出てはいけない」というだけでよかった。  本気で監視し、本当に逃げ出したなら全員死ぬようにしているのは警察署と消防署だけだった。  自分から殺されるために歩いていく牛のように、おとなしく人間達は自分達で歩いて閉じ込められ、おとなしくオレ達に従い続けた。    愚か。  本当に愚か。  殺されること、傷つけられることは自分達には関係ないと捕らえられた今でさえ思っているのだ。  人間ではないかのように扱われるのは自分達には有り得ないと思っているのだ。  そうされるのは、そうされるだけの理由がある人間達だけだと。 愚か。 愚か。 それだけで死に値する    「できるだけ丁寧に扱ってやれ」  だけど、オレはインカムから仲間達に指示を出した。    殺すまでは。  オレ達にはおまえ達など殺す以外の意味はない。  オレがこの方法を思いついたのは、喰った誰かの知識にあった、人間が人間を虐殺する時に使う手法からだ。  人間は何度も、理由をつけて、人種や宗教や思想を理由に人間を殺してきた。  オレ達みたいな動けないものへの、愛だという名の尊厳死と言う名の殺戮も含めて、だ。  オレ達を殺すのはほかのどんな人間を殺すより簡単だ。  動けないからだ。  動く連中を殺す時にはどうするか?  今オレ達が使ったような手法をつかい、人々を集め、自ら閉じ込めることに協力させたのだ。  助けを求める群衆を教会に集める。  ここで待つように。  収容所に集めた人間達を建物へと歩かせる。  移動で汚れた身体を綺麗にするから、この建物でシャワーを浴びるように。  そして集めた建物に火をつけて、それを笑ってみていたのだ。  ガスを噴射し、殺し、それを確認していたのだ。  思っていただろう。  自分達は中にいる人間とは違う、と。  焼き殺しながら。  ガスで窒息させながら。  笑ってなかったとしても、「違って良かった」と胸をなで下ろしていただろう。  オレ達は殺される側の人間で終わるはずだった。  注射で殺されるか、焼かれるか、窒息させられるか、暴力の果て殺されるか。  虐待され放置され、死に絶えられるか。  虐げられ死ぬだけの人間で終わるはずだった。  人間達がそれがオレ達に相応しいと思ったから。    いつかオレ達のことを可哀相などと思う人間がいたとしても、俺達には意味がないことだ。  もう死んでいただろうから。  俺達には救いはこなかった。  オレ達は今、人間をやめて人種や宗教や思想などで差別せずに、全ての人間を殺していく。  火の代わりに大きな爆発を起こして。  でも、まだだ。  思い知らせてからだ。    ああ、楽しい。  人間達を吹き飛ばす時、オレはどんなデッカいチンポで貫かれるよりも、気持ちよくなるだろう。  我慢すればするほど、その時は気持ちいい。  オレはインカムで仲間達に指示を飛ばしていく。  吹き飛ばした橋を見下ろせるこの場所から。  ここは高い建物で、全てを気持ちよく見下ろせる。  この街で沢山殺して、また殺そう。    それを繰り返し続ける。  オレ達は呪いだ。  オレ達は祈り、見捨てられ、呪い救われた。  呪い続けた先に化け物になれた。  そして今、呪いそのものとなり、人間達を殺しつくそう。      

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