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第2話

 啓司を見やる。視線がかちあった。 「……他のやつにも、こんなこと、してんのか? 優等生」  侮蔑の視線に、胸が、痛むのを感じつつ、蓮は、言う。 「こっちに、集中して」  手を動かすと、今の不機嫌そうな侮蔑が、一瞬で、快楽の眼差しに変わった。  小さな声が、漏れる。いつもより甘くて、かすれた声だった。 (この声が、僕の、名前を呼んでくれたら良いのに)  けれど、そんなことはないだろう。  甘い夢を見ながら、蓮は、啓司を追い詰める。啓司の呼気が荒くなる。先走りのおかげでぬめりを帯びて手は動かしやすくなる。熱い。硬い。はち切れそうだ、と、おもったら、急に、啓司が蓮の頭に手をやった。そのまま、どかそうとするのがわかった。 「も、ダメだ……どけ……」 「いいよ、手の中にして」 「は? なに、言って……」  部屋着ではなくて制服のままで来てしまったから、制服に付いたら、少し困るかな、とは思うが、このまま、体のどこかで彼の精を受けてみたかった。 (こんなの、多分、一生に一回のことだし)  啓司が、きゅっと目を瞑る。その瞬間、蓮の手の中に生暖かくて濃い、粘度を伴った液体がほとばしった。手を動かし続けると、くちゃくちゃ、という聞くに堪えない淫音が響く。 「あ、もう、良いから……っ!」  啓司の手に押しのけられて、蓮は離れる。手は、べったりと、彼の精で汚れていた。 「それ……これで拭いて」  ばつが悪そうに顔を背ける啓司から、蓮は差し出されたタオルを受け取らなかった。 「鳩ヶ谷?」  訝しがる啓司と、蓮の、視線がかち合う。  蓮は迷わなかった。  手についた濃い白濁に、舌を伸ばした。舌先に、生暖かさを、感じた。青臭い、というか、生命そのものの匂いがすると思った。 「なっ……!! 何して……!!」  あからさまに驚いて、真っ赤な顔をしながら叫ぶ啓司を見て、蓮は少し満足した。こんなことをしたやつのことを、少しの間だけでも、覚えておいて欲しかったからだ。 「……変な味がするもんだね」 「そりゃ、そんなの、舐めるようなもんじゃないだろ」 「でも、嫌いな味じゃなかったよ」  蓮の言葉を聞いた啓司が、大きく目を見開く。 「お前……なんなんだよ」 「さあ? じゃあ、本、間違えてごめんね。僕はもう帰るね。おやすみなさい」  言いたいことだけを告げて去った蓮の背後から、なんとも言えないうめき声が聞こえてきたが、蓮は気にしないことにした。

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