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第9話

 部屋に戻った蓮は、ベッドに身を投げ出した。  手の中に、口の中に、啓司の感触が残っている。 「はあっ……」  大胆なことをしたし、口走ったともおもっている。だが、後悔はしていない。  実際、触れてみて良かった。自分の手で、啓司に快楽をもたらすことが出来た、というのは、なによりも得難い体験だった。  啓司の吐きだした欲望を口で受けて、体液を飲み干したとき、蓮自身も、達してしまいそうになるほどの快楽を得ていた。これは、体験しなければわからなかったことだ。 「……」  まだ啓司の匂いが、消えていない。蓮は、自らの服を脱いでいく。  今まで、こんなに生々しい気持ちを抱いたことはなかった。 (鷲尾くんが……触ってくれたら……どんなふうだろ……)  啓司の手を想像しながら、身体を撫でる。自分の身体を自分で触れたところで、今までならば、特別な感慨を抱かなかったが、今は違った。  自分の手なのに、身体がびくっと大仰に、跳ね上がる。 (あ……本当に……鷲尾くんが触ってくれたら、どうなっちゃうんだろ……)  啓司の手。頭を掴まれて、引き剥がされそうになった。その、手。大きくて力強かった。荒々しく、肌を探られたい。どうせ叶わない妄想なら、有り得ないほど乱暴に求められる妄想が良い。  身体を撫でる。素肌は、さらりとしているが、しだいに汗ばんでくる。胸の突起をかすったとき、身体がびくんっと跳ねた。 「んんっ!」  今まで、乳首で感じたことはなかった。触れても、いじってみても特に、感覚はなかったから、本で、ここを攻められて気持ちよさそうに喘いでいる男性の描写をみて、あれは、本の中だけのことなのだと思いこんでいた。 「あ……? えっ、なんで……?」  なんでこんなところで感じてしまったのかはわからないが、恐る恐る、そこを指の腹で押してみる。ふにっとした感触だった。けれど、芯があって、そこを押していくと甘い、じんわりとした気持ちよさがあった。 「あ……」  確かに感じる。 (妄想しすぎて、身体が、変わっちゃったのかも……)  さっきは口でしただけなのに、蓮の方まで気持ち良くなってしまった。考えられないことだ。いじっていると、乳首が、固く尖ってくる。 (え、本当に、こんなふうになるんだ……)  もっともっといじって欲しい、と切なく主張するような姿だった。ちらりと乳首を見やると、良く熟れたさくらんぼのような、官能的な色合いに色づいた突起が見える。  指で摘んでみる。つんとした鋭い快に続いてさざなみのような微妙な快楽が、身体に広がっていく。  性器を直接弄るのとは、まったくことなる快だったが、性器と繋がっているようで身体の奥が熱くなっていく。 (あ、乳首、気持ちいいかも……)  夢中になっていじっていくうちに、また、別の妄想が頭の中に湧き上がる。 『舐めてあげようか?』  啓司の声で想像したら、腰が震えた。 (あ……舐めて……舐めて欲しい……)  啓司の舌の感覚を、蓮は知らない。けれど、たっぷりと唾液を纏わせて、ぬめりを帯びているに違いなかった。 (あ……鷲尾くん……)  妄想の啓司は、蓮の胸をまさぐって、固く立ち上がった乳首に舌を這わせる。 (……近い感じって、どんなだろ……)  舌先を想像する。柔らかくて、熱い。舌自体は少しざらついていて、ぬめりがある。  蓮は自分の口に、空いているほうの手を持っていった。口の中に指を突っ込む。自分の指を、舌と口腔で愛撫した。  口の中と、胸と。同時に刺激がきている。目の前が、ぼうっとして、しろく明滅している。 「んっ……んぁっ……」  声が漏れてしまって、蓮は慌てて声を抑える。誰かに、聞かれたら大変だ。ベッドの上で、肌を晒して胸と口をいじっていると知られたら……。とんだ変態ではないか。羞恥に、身体が燃え上がる。もう、止めなければと思うに、裏腹に、体は、もっと違う快楽をホッしていた。 (あ……奥……)  奥の入り口に、触れたことはない。だが、ずっと興味はあった。  誰も、触れないだろう場所。そこへ、唾液で濡れた指を這わせる。粘膜、に直接触れた瞬間、身体が跳ね上がる。気持ちが、良い。入り口を円を描くようにして撫でているだけで、胸とも性器とも違う快が湧いてくる。そこが、ひくひくと動いているのが指先に伝わる。 (ちょっとだけ……)  指先をゆっくりと沈めてみる。こじ開ける、でもなく、ゆっくり、そこへ指先が入っていく。 (あ、……入っていく……)  さすがに中指の第一関節くらいしか入らなかったが、それでも、そこに指先が入ってしまったことに、驚いてしまう。  内部の感触は、良くわからなかった。ただ、円を描くようにして撫でると、内腿が震えた。気持ちが、良い。 (乳首も、アレも、おしりも……全部、気持ちいい……なにこれ……)  もっと奥に触れてみたいのに、さすがに固く閉ざされたそこは、それ以上の侵入を許さなかった。この先にもっと確かな快楽があるのはわかっているのに、それが得られなくて、不満ばかりが募る。 (奥まで……)  触れてみたい。きっとなにか、方法があるはず。中途半端になった熱を開放して、蓮はぐったりとベッドに倒れ込んだ。

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