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第11話 冷たい中庭2

 公務のためにあわてて地上へと戻って行った、アニマシオンを見送り… 広間(秘儀(ひぎ)の間)に映写(えいしゃ)魔法で映し出された玉座(ぎょくざ)の間から、いつも見ているカジェがお気に入りの、中庭の景色へと切り替えた。  「あ~あ… 殿下が行ってしまった… もう少しだけ、一緒にいたかったなぁ…」  フゥ―――ッ…… とため息をつきながら… 中庭を散歩でもするように、カジェは裸足で冷たい石床をぺたぺたと歩き、アニマシオンと抱き合い“(つがい)”となった場所へ向かう  昨夜、アニマシオンが訪れる前に、カジェが自分で整えた粗末(そまつ)寝床(ねどこ)に… 前夜の激しい性交で、にぶい痛みと(だる)さを感じる思い身体をごろりと横たえ… うっとりと微笑む。 「ああ… やっと殿下に会えた! 殿下に会えたよぉ…! ふふふっ…」  びっくりしたぁ… だって、映写魔法で見ていたよりも、実際にお会いした殿下は、とても素敵だったから… 本当に、びっくりしたぁ~…!  大賢者の弟子カジェは、師匠のピントゥラに未来視(さきみ)の魔法で選ばれて、9歳の年で地下の生活に入った時から… 自分は『アニマシオンの“番”になり、アニマシオンの賢者となる』、そして『国王となったアニマシオンの、助けとなる』 …と、しっかりとした自覚と責任感を持って成長した。  そんなカジェだからこそ、映写魔法で映された景色の中に、自分の“番”となるアニマシオンの姿を見つけては… 早くアニマシオンに会いたいと、恋い()がれていたのだ。  実際に会う前から、カジェはアニマシオンを深く愛し… そんな月日をカジェは10年近くも、すごして来た。 「ふふふっ… それに、殿下は僕を抱っこして運んでくれたし… 本当にびっくりした! ピントゥラ様よりも… 殿下はすごく大きな人だったし、手も力強くて、(たくま)しかった!」  僕と同じくらい… 殿下も僕を、好きになってくれれば良いけど…?  カジェは頬をピンクに染めて、アニマシオンのことを思い出しては、嬉しくて… 嬉しくて… クスクスと笑う。  その一方で、アニマシオンの方は… 大賢者の存在は、インテルメディオ王国と、国王に即位した後の自分にとって重要な存在だと、よく理解していたが……  今まで大賢者は、国王の手で厳重に守られていて、アニマシオン個人の印象では… 大賢者は謎の人物で、必要だけど遠い存在だと感じていた。  その遠くて謎だった存在に、弟子がいて… その弟子カジェと“番”になることも、アニマシオンはほんの数時間前に知ったばかりで、戸惑うことが多く、すべてを納得して受け入れるのに、まだまだ時間が必要で、カジェとの間に大きな意識のズレがあった。  

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