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第12話 ひとりぼっち カジェside
1日が過ぎ、3日が過ぎ… 1週間… 半月が過ぎても…… アニマシオンは秘儀 の間に、あらわれなかった。
ひたすら待つ身となったカジェは、1日が数日に感じ… 1週間が数ヶ月のように、長く… 長く… 感じていた。
映写 魔法を使い、鍛錬 場で騎士たちが日課の剣の鍛錬を行う様子を、カジェは冷たい石床に座り、膝を抱えてボンヤリとながめる。
騎士たちに混ざり、剣を振るアニマシオンの姿があるからだ。
「昨日はいなかったけれど、今日は鍛錬に来たんだ? 鍛錬が終ったら… 殿下は儀式を受けに来てくれるかなぁ? やっぱり夜にしか、来ないか…?」
いつも国王陛下がピントゥラ様に会いに来る時は、真夜中だったし…?
国王はいつも、ピントゥラに会いに来る時… 魔法で作った金色の幻鳥に伝言を載 せて、先触 れとして地下まで飛ばして来た。
「・・・・・・」
だから僕は、金色の鳥が石壁をすり抜けて来ると、陛下と顔を合わせないように、居住スペースから出ないようにしていた。
そうしないと、ピントゥラ様に怒られてしまうから… あの頃は、なぜ師匠が僕を広間から追いだすのか、分からなかったけれど…
「ふふふっ… どうして未来視 の魔法を実際に、見せてもらえなかったか、今なら分かるけどね」
僕は一度で良いから、未来視の魔法を使うところを見学させて下さいと、ピントゥラ様に何度もお願いしたのに… なぜか顔を真っ赤にして、『絶対にダメ』と断られてしまって… だから、こっそり盗み見ようとしたら、扉が開かないように、魔法がかけられていた。
カジェの記憶では… 金色の幻鳥が飛んで来て、自分が居住スペースに押し込まれる日は、週に2,3回はあった。
つまり… そのぐらい国王は、ピントゥラに会いに来ていたことになる。
「僕は殿下に、嫌われてしまったのかなぁ? どうすれば良いか、わかんないよ… 寂しいなぁ…」
大賢者の居場所を厳重に隠すために、カジェが暮らす地下からは、連絡を出すことは許されず… アニマシオンや国王が暮らす地上の王宮から、一方的に送られて来る連絡を、ひたすら待つことしかできないのだ。
「1人は嫌だなぁ… 嫌だなぁ…」
これまでは師匠のピントゥラがカジェを支え、教え導き… 側で見守っていたため… カジェの寂しさは耐えられないほどでは無かった。
ピントゥラが大賢者の役目を終えて地下を去っても、アニマシオンが“番 ”となり、カジェの寂しさを埋 めてくれると、信じていた。
映写魔法で、当のアニマシオンの姿を見ていると… 地下に住むカジェのことなど、綺麗に忘れてしまったように思える。
「毎日、ピントゥラ様は玉座 の間を映して、国王陛下の姿を見ていたけれど… 陛下はピントゥラ様が、ご自分の姿を見ているのを知っていたみたいで… こちら(映像を転送する魔法陣)を見ては、ピントゥラ様に合図を送るように笑っておられたのに…」
アニマシオンの態度は、これまでのように、カジェの存在を知らなかった頃と同じだった。
「・・・・・・」
すごく怖いよ… 本当にこのまま、僕は殿下に忘れられてしまうのかなぁ…?
たった一人、冷たい地下に残されて、誰にも知られず忘れ去られてしまうかも知れないと…
石床から感じる冷気で、背中を震わせながら… カジェは怯えた。
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