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第12話
「人違いじゃないですか…僕はただの新入生です」
恐怖に怯えながらも、彼等が探している人物が僕ではない事を祈り、震える声で話した。
「なんだよ、声まで震えちゃって可愛いなぁ。やっぱり遠目より近くで見る方が可愛さ倍増だなぁ」
金原號らしき人物は、一気に僕との距離を詰め、強引に顎を掴み上を向かせた。その視線は今まで僕を虐めてきた奴等と違い、気持ち悪さが走る視線だった。
僕はいきなりの出来事に咄嗟に反応できず、つい声が出てしまった。
「いっ………」
「あぁ、痛かったか。悪いな。あまりにも俺好みだったからつい間近で見たくなっちまってな」
そう言いながらも顎の手は離さず、今度は全身を舐め回すように見てきた。何なんだろ、この違和感は。殴りたければ早く殴ればいい。僕一人ではこんな大勢に勝てっこないんだから……
「おい、お前ら。このお嬢様をあの倉庫に連れて行け!」
「はいっ、號さん!」
………號。やはりこの男が號なのか。
そう気づいた時には既に遅く、周囲に居た5人の男は、號の言葉を聞いて即座に僕を連行しようとした。両腕を後ろ手に縄で縛り、足にも縄を。口には布を突っ込まれ、目には目隠しを。一瞬の出来事で何が怒っているのかわからぬまま、僕は誰かに担がれ、そして運ばれようとしていた。
「んー!んんーん!」
「なんだい?奈津姫も俺達と遊ぶの楽しみなのか?ははっ、いいぜ!これからたーくさん楽しい事しような!」
なんで僕の名前を知っているの……?
それに姫って何……?
そんな疑問が頭に浮かんだが、號の不敵な笑みに寒気がし、思考が停止した。
僕は一体これからどうなるの………
アキに頼らないって決めたのに……
僕一人で何とかするって決めたのに………
結局僕一人では何もできないんだね……
アキ、ごめんね………
僕やっぱりアキが居ないと………
今更後悔しても遅い。
何も見えず、何もわからないまま、僕はどこかへ連れて行かれた。
どれだけ願っても、
助けなんか来るはずはなかった………
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