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第11話

入学式は粛々と終わった。 出席番号順に並べられ、長い長い校長の話を聞きながら、ひたすら時が経つのを待つ。 両隣の子と友達になれるかな…と考えるが、話しかける勇気もなく下を向く。 … 一方、奈津本人は全く気づいていなかったが、周囲では奈津へ注目が集まっていた。 「なぁ、あの子めっちゃ可愛くね?」 「本当だ!女の子…?いや、ズボンだから男か」 「男でも関係ねぇよ!あの可愛さなら抱ける」 「ハハッ!間違いねぇ!」 「しかもその辺の女より可愛くねぇか?」 「たしかに!あの肌の白さと華奢な感じ。髪色まで自然な茶色とか、男心くすぐられるな〜」 「しかもあの、あどなさ!穢れを知らない無垢な感じが堪んねぇよな!」 「後で話しかけてみる?」 「いやでもさすがに狙ってるやつ多そうだし、高嶺の花すぎるだろ!」 「それもそうだな〜」 入学式に居た新入生の間では、謎の美少年で話題が持ちきりになり、奈津は一気に学年一の有名人になった。 ……その噂は早くも他学年にも広まっていた。 … 入学式を終え、教室に戻ると、既に友人を作っているグループがちらほら。 奈津も負けじと声を掛けようとするが、周囲からの視線に耐えきれず、なかなか一歩が踏み出せない。 どうしてみんな僕をチラチラ見てるんだろう… 僕の顔に何か付いてるのかな… そう思い、周囲の声に耳を傾けてみると、 「ねぇ、知ってる?3年生にめっちゃ怖い先輩いるの!」 「噂で聞いた事ある!金髪でピアスも沢山空けてる人でしょ?しかも右眉に剃り込みも入ってるらしいし、見た目からして怖そう…」 「そうそう!しかも喧嘩も強いらしいから近づきたくないよね〜」 「わかる!関わったら碌な事にならないよね!」 「確か名前は…金原號(かねはらごう)だっけ?」 「うっわ、名前からして怖いんだけど…」 「しかも家が超金持ちらしくて、うちの学校にも出資してるみたい」 「それじゃ、学校も何も言えないよね」 「だよね〜やだやだ」 ……そんなに怖い人か居るんだ。 僕も関わらないように気をつけないと。 結局友達を一人も作れないまま、入学初日は終わりを告げた。 下駄箱で靴に履き替え、明日からはもっと頑張ろうと意気込み、帰路に着く。 校門を曲がり、人通りが少ない路地へ入った時、ふと目の前を数人の男達に囲まれる。 ……え、誰、この人達……… 「よぉ、お前が噂の美少年ちゃんだな?」 そう話しかけてきた男は、男達の中でも一番オーラがあり怖かった。 金髪ピアスに、右眉の剃り込み。 その見た目は、絶対に関わりたくない先輩の特徴にそっくりだ。 ……これが僕の地獄の始まりだった。

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