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第20話 (完)

 今日は結婚式当日。番、契約(Claim)、入籍を済ませ、ようやく2人はここまでたどり着いた。  列席者は希の家族と霞の親族、2人の友達。そしてプレイバーのマスターやアキラにもダメ元で招待状を出したが、2人とも駆けつけて来てくれた。  マスターは希のことも霞のことも心配していて、まるで子供のように思っていた、と語っていた。アキラは「そりゃ首輪(Collar)も指輪も作った2人の門出は見るしかないじゃん?あ、店番は弟に任せてきた」だそうだ。後で調べたら、結構関わったカップルの結婚式に列席しているらしい。    霞はタキシードを、そして希は純白のウエディングドレスを着ることにしていた。こういう機会は他にないからと、希が希望したのである。好奇心旺盛なのは元々だ。着てみたら思った以上に歩きにくかったのは計算外だったが、それ以上に嬉しい気持ちが勝った。  式前に霞に見せたら「なんでそんなに似合うんですか…!」と天を仰がれた。「うーん…プロポーションがいいから?」と言ったら軽くはたかれた。実際、式の後誰もが花嫁衣裳に身を包んだ希はまるで天使のように見えたと口を揃えて言っていた。  式場に入る前に、母がベールダウンをする。2人とも無言だったが、母は新しい門出を祝福するように涙をその目に湛えつつも微笑んでいた。  それから両親と共にバージンロードを歩く。ΩSubとして生まれ、霞と出会い、そして想いを通じ合わせるまでの道のりを噛み締めながら、1歩1歩霞のもとへと近づき、たどり着いて、両親から霞へと希が受け渡される。  祈りの言葉が述べられ、いよいよ牧師からの問いかけが始まった。 「霞さん、あなたはここにいる希さんを、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」 「誓います…!」 「希さん、あなたはここにいる霞さんを、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」  希は息を吸うと、はっきりと「誓います」と答えた。  霞の母親が泣く声が聞こえる。どうも彼女は特に涙脆いようで、この前もウエディングドレスを見せて初めて「お義母さん」と呼んだら号泣させてしまった。  次は指輪交換だ。震える手で霞が牧師から指輪を受け取り、希の左の薬指にはめる。希も霞の手を取り、希よりいくらか小さい手に指輪をはめた。  プラチナで出来た指輪には波打つような花と若草のレリーフが彫られている。指輪選びには首輪以上に苦労して、最終的にお互いをイメージしたデザインにした。首輪ができてすぐに契約を済ませ、その時にゴールドのシンプルなペアリングも作ったのだが、この指輪を頼めるようになるまではと、結婚式は先延ばしにしていたのだ。  ペアリングに並んで、その指輪が光る。  それから霞がベールを上げる。予想していた通り今にも涙が溢れそうだ。  希は少しかがみ、霞のキスをそっと唇で受け止めた。 (完)

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