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第1話

『安遠海岸にて、午前3時ちょうどに、足を海に入れ、願い事を言えば叶う。この時、嫌われると足をすくわれ、その者の思い出の地に隠される。誰かに見つけてもらうまで、永遠に。』 「安遠(やすとお)?!安遠海岸って、あそこじゃん…」  8月20日、京一(きょういち)は、エアコンをきかせ、さらに扇風機をきかせた冷たい部屋のベッドに寝転がり、日課の都市伝説サイトをチェックしていた。 「あの海岸の噂なんて聞いた事なかったけど…嫌われるって誰に…?つか隠されるって何だよ、」 サイトに幼い頃よく遊んだ海岸が書かれていたので、興味津々で見続けている。 夏は都市伝説や怖い話がたくさん投稿され、オカルトやホラーが好きな京一にとって嬉しい季節であった。 部活動は夏の大会で引退し、ダラダラと高校生活最後の夏休みを過ごしていた。受験勉強のためにと、参考書などを買ってみたものの、ほとんど手つかずのまま机の上に積まれている。 京一は、スマホを片手に仰向けのまま、つま先でカーテンを少し開けた。雲ひとつない青い空を8月の光が射抜いている。 ゆっくりと目を閉じた奥に、金色の髪が揺れた。 「…あいつ誘って、検証してやろうかな。 あー、でも、受験勉強で忙しーかな、」 とりあえず、京一は『あいつ』にメールを送り、都市伝説検証の予定を考え始めた。もし断られたら、1人で検証するつもりなのである。

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