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楽園 1
手慣れた様子でズボンも下着も脱がしたくせに、今も熱い目で見下ろしてくるくせに。
そこへ手を伸ばすことに躊躇う気配を感じて、タクミは泣いた
やっぱり男の身体は嫌なのだ。
前にあったアレは。
あの時のは。
タクミを離したくなかったからだけで、そうしたかったわけではなかったのか。
「違うって・・・違うから」
タクミの気持ちを何故だか悟ったキヨハラが焦った声を出す。
「嫌なら止めろよ!!出ていけよ!!」
タクミは怒鳴る。
ここがキヨハラの家だと言うことを思い出せない程にタクミは怒っていて悲しんでいた。
タクミだって。
男に抱かれることに怯えて、でも、決断したのにこれでは、あんまりだ。
「ちがうって違うって!!」
キヨハラは横たわるタクミの上に、腕を立てて覆い被さるようにして見下ろしていたのを、力を抜いてどさりとタクミの上に乗ってきた。
その身体の重さと、互いにシャツを脱ぎ捨てた肌が触れあって、タクミは肌の熱さに呻き、そして泣いてしまう。
自分はこんなに興奮して、ズボンも下着も脱がされ、みっともない程に勃起してるのを晒したのに。
でも、こんな勃起性器を見せてしまったなら、相手がソレに動揺するなんて。
覚悟を決めてたのは自分だけで、相手はやっぱり躊躇ってるんだと思うと悲しくてたまらなかった。
オレがどんな覚悟を決めてきたと思ってるんだ。
コイツは。
タクミは唇を噛んだ。
泣いて、もがいて、押しのけようとしたけれど、キヨハラは今度はタクミを抱きしめてはなさない。
「違うから。確かにビビってるけど、お前が思っている意味とは違うから」
キヨハラが囁いてくる。
何だか悔しそうに。
なんだよ、ソレ。
タクミはキヨハラを睨みつけた。
「好きな子の裸見たら、怖くなるんだって初めて知ったんだよ。分かってよ」
困ったように言われた。
キヨハラが来るものは拒まずで、色んな女の子としてたのは知ってた。
そんなキヨハラの言葉とは思えなかった。
「初めて誰かを好きになったんだ。分かってよ、タクミ」
囁かれてずるいと思った。
キヨハラと違って、全てがタクミには初めてなのに。
女も男もセックスについても、タクミは知らない。
キヨハラからされたキスしか、キヨハラから触れたことしか、タクミは知らない。
そんな自分の初めてとキヨハラの初めてが同じはずがないのに。
「想像の中じゃ何回も犯してるのに、本当になったらビビってしまった」
キヨハラの言葉にタクミは赤くなる。
タクミは。
そこまで具体的にキヨハラとのことを考えてきたわけではない。
キヨハラに何をされても良いと思ってここへは来たけれど。
具体な想像は出来ないまま、ここへ来てしまった。
後ろに挿れられることは理解してはいるけれど、それを具体的に想像はしてなくて。
キヨハラに触られた手とか、キスされたときの舌のことを考えてオナニーしてきたくらいだ。
その先を考えるのが怖かった。
でも、そうされる覚悟は決めてここに来た。
「好き過ぎて怖くなったんだ。だから・・・怒らないで?」
優しく言われて、いつもの優しいキスをされたなら、タクミは蕩けてしまう。
優しい舌がタクミの舌を絡めとり、タクミの舌を溶かしてしまうから。
「好き。好きだよ。タクミ」
キヨハラは囁きながら、今度は躊躇すること無く、男以外の何者でもないタクミのその場所に手を伸ばしてきた。
熱いキヨハラの指に触れられただけで、タクミは情けなく声を上げた。
「全部。オレのにするね」
キヨハラの声はどこまでも甘かった。
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