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赤い糸、たぐってみれば君と僕

 昔、むかぁし。潮が引いたあとの砂浜に、ぽつぽつと穴がうがたれた。それらはシオマネキが這い出した跡にすぎないのだが……、 「子種仮面、参上! とりゃー!」  太郎は着物の裾をからげて腹這いになった。そして、ナスビでも隠し持っているようにせり出した股ぐらで穴をずこずこと掘り進める。その光景は干潮時の風物詩だ。シオマネキのほうも慣れっこで、(ふんどし)の隙間からハサミをもぐり込ませて和毛(にこげ)をちょきちょき。  きりっとした顔立ちの若者が、うらうらと陽が照る(もと)で、砂をはね散らかして腰をカクカクと振るさまは生命感にあふれて眩しい。  木の(うろ)といわず、竹輪のそれといわず、桶の底に空いたものといわず、穴という穴にそそられてギンギンにおっ()つ。ぴっちぴちの二十歳(はたち)とは、下半身に暴れん坊を飼っているのである。  と、松林のあたりがにわかに騒がしい。覗きにいくと、村の悪たれ小僧たちが、いなせな法被姿(はっぴすがた)の亀を取り囲んでいた。パクりではない、へのオマージュである。  寄ってたかってイジメているような光景だが、さに(あら)ず。魔法のランプになぞらえ、わいせつ物陳列罪が適用される形の頭をこすって、しみ出したガマン汁の量を競い合っているのだ。 「亀の分際で、うっ、羨ましい……!」  負けちゃおられん、と松ぼっくりを褌に詰め込んだ。巨根(シークレットブーツ同様上げ底の)を餌に悪たれどもをおびき寄せる作戦なのだ。カモン、ベイビーズ、兄貴分のよしみで手コキのやり方を実演してあげるよ。 「やべぇ、太郎にロックオンされた。やりたい菌が伝染(うつ)る、逃げろー!」  悪たれどもは、お尻ぺんぺんで挑発してきながら走り去った。 「危ないところを助けてもらって恩に着ます。いやあ、一滴残らず搾り取られて干からびてしまうかと」    そう(へりくだ)ってみせるわりには、亀はドヤ顔でマウントを取る。実際、一種のデトックス効果とでも言おうか、いじられまくったおかげで甲羅はワックスをかけたようにぴかぴかだ。  ちなみに法被の背中には〝明朗会計・竜宮楼〟と染め抜かれている。 「お約束の展開につき、もろもろ端折って海の底の桃源郷に案内しますぜ」 「行くべ行くべ、さあ行くべ」    太郎は、いそいそと亀に跨った。どこからどう見てもあれにしか見えない頭部を某所に銜え込んだうえで。童貞だが、菊孔のほうは芋茎(ずいき)──芋がらを編んでこしらえた特製の張り形を出し入れして、ばっちり開発ずみなのだ。  本物の魔羅をずどん! と、いきしだいメスイキを(きわ)める自信があるほどだ。

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