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第5話

レストランのテラス席へと移動すると隅っこの席に座るように進めた。 夜になって少し寒くなったが、酔った身体には丁度良い。 「なんで、三鷹が泣くんだよ」 「……千種先輩は、分かってるでしょ」 知っている。 俺が匠真に向ける気持ちを、三鷹は俺に向けていて、その気持ちが痛いほど理解出来ている。 きゅっと口を結び黙り込むと、室内から賑やかな笑い声が聞こえてきた。 まるで、線引きのようだ。 あっちと、こっち。 明るい昼間にアピールしたらあっちに行けるのか。 暗い夜に鳴かずにアピールしたって意味はないのか。 八月朔日もその隣に腰掛け、空を仰いだ。 高い空はキラキラと輝き、今日を祝福している。 「三鷹となら、傷を舐め合えんのかな」 最低な言葉を吐き、 自己嫌悪。 セットした髪をクシャッと崩した。 「ホテル…行きたい……」 「は? 駄目に決まってんだろ…」 「ホ゛テ゛ル゛…」 柴犬だと思っていたが、子供だ。 5歳児だ。 甥っ子とそっくりの反応に、眉を下げる。 これは酒も手伝っている。 更に髪をクシャクシャと乱す。 「行かねぇって…」 「傷、舐め合うって…言ったのに…、」 「言っ……たけど、そういう意味じゃねぇ…」 本当…。 「ホ゛テ゛ル゛……」 「…………俺の、泊まってるところなら…」 「抱゛く゛……」 「………………添い寝だけ」 ん? 「待て、なんで俺が抱かれる側なんだよ」 「抱゛き゛た゛い゛か゛ら゛…」 なんだ、こいつ。 けれど、ほんの少し心が助けられた。 この気持ちを殺さずにいても良いんだと、待ったまま生きていて良いだと思わせてくれた。 まだまだ終わりそうもない二次会が終わったら、その時に考えても良いか。 「考えとく」 そう。 二次会が終わった後に、な。

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