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「えーっと、では2年C組担任の竹内 です。1年間よろしく。じゃ、順に自己紹介お願いします。出席番号1番から」
その声かけで自己紹介が始まった。知ってる顔、知らない顔、見かけたことはある顔。邦貴はいつも通りの明るいキャラで笑いを取っていた。
そして次はメガネくん。
カタンと椅子を引いて立ち上がるバランスのいい長身。
「えっと、1年の時はE組でした」
あの時、大丈夫?と訊いてくれた低めの声。
「遠野桐人です」
え?
遠野、桐人…って…
え? え? え? 桐人?! メガネくんが?!
マジで?! 全然違うんだけど!!
…全然、気付かなかった…
呆然として、桐人の後ろ姿を見つめて、ただただ心臓が跳ねている。
桐人の後も自己紹介は続いているけれど、何一つ頭に入ってこない。
「次、森下。おーい森下、目ぇ開けて寝てんのか?」
「えっ、あっ、は、はいっ」
慌てて立ち上がって、あわあわしながら自己紹介をした。
何を言ったか全然覚えてない。
でも友達は何も言ってなかったから、そんな変なことは言ってない、と思いたい。
そういえば桐人は?
桐人はオレに気付いていたのかな…?
休み時間は短くて、邦貴や他の友達もどんどん話しかけてきて、桐人に声をかけられなかった。ちらちらと桐人の方を見ていたら、席を立つ桐人と目が合ったけれど、キラリとメガネが反射して表情はよく分からなかった。
放課後も、気付いたらもう桐人はいなくなっていた。
名前ぐらいは、覚えてると思う。
それにオレは桐人ほど見た目は変わってないと思う。
だから、桐人だってオレがあの時の知希だと分かってると思う。
じゃあ、分かってるのに話しかけてこない理由は?
分かってるのに、さっさと帰ってしまう理由は?
購買では助けてくれたけど、でもあれは後ろからだったからオレだと分からずに助けてくれたんだろうし。
桐人はオレに会いたくなかった、のかな…。
それともやっぱり、オレの事なんかすっかり忘れちゃったのかな。
そんな風に考え始めるともう動けない。
始業式の日から二日。オレは桐人と話せていない。
母にも、なんとなく言いづらくて話していなかった。
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