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知希はたぶん、赤面しやすい体質なんだろうなと思った。
顔の皮膚が薄いのかもしれない。触ったら気持ちよさそうなすべすべの肌。
だから、頬を赤らめるのにそんな大きな意味はないんだろう。
そう思いながら、俯いた知希を見ていた。
「…たぶん、お母さんのハンバーグより美味しい」
え?
ポツリと、そんな事を知希が言った。そして上目遣いで俺を見た。
うわ、これは…、ちょっと無理
「だから…、お前褒めすぎ…っ」
色々な感情が混ざってキャパオーバーしそうで視線を外した。
「そんな事ないよー。マジで美味いもん」
「分かった、分かったから黙って食え。ほらブロッコリーも」
弁当を褒められた時も思ったけど、好きな子に褒められるのは嬉しいけど照れくさい。
しかも2人きりだから、知希が俺を真っ直ぐ見つめてくるから尚更だ。
照れ隠しに知希の小皿にブロッコリーを盛ってやる。
「桐人も取り箸使う派だよね。うちと一緒」
そう言われて、5年前の4人の食卓を思い出した。
「もうそれが習慣だから」
と言ったところで、あれ、と思う。
「あ、でもあれか。知希も虫歯ないんだっけ。なら俺ら2人なら大丈夫、て事?」
「…かも」
正直なところ、やめ時が分からなくて続けている、と言えなくもない習慣。でもやめたら今までの努力が水の泡になるんじゃないかという躊躇いも、やっぱりある。
それを、知希と2人の時は忘れられるなら、いいな。
そう思って視線を上げると、知希が笑いかけてきて、つられて俺も笑った。
ふわっと心が軽くなる。
「あ、そういえば訊かずに勧めたけど、知希ブロッコリー好きだった?」
「うん、好き」
また、その言葉に胸を撃ち抜かれる。
心に受けたダメージが可視化できたら、俺結構重傷だと思う。
本人に全くそんなつもりはないだろうが、かなりの凄腕スナイパーだぞ。
「ねぇ、桐人、今度さ」
その、可愛いスナイパーが俺を呼ぶ。
「うん?」
今度はどんな弾を撃ってくるのかと思っていると、大皿中華が食べたい、とねだってきた。
確かにあれはやってみたい。
楽しみ、と笑いかけてくる無防備な表情。
これをいつまでも見たいなら、相当な精神の鍛錬が必要だな、と思った。
うっかり手を出してしまったら、もう2度と見られない。
やっぱキツいな
そう思いながら片付けをして、時計をちらりと見た。
もう帰るって言いそうな時間だな。
でもまだ帰したくない
「知希、アイス食える?」
無駄な抵抗だって解ってる。
「食える! でもいいの?」
アイス1個食う時間なんてたかが知れてる。
それでも引き止めたい
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